CLOLR

 

 

 

 

 

 

 

 

鮮やかな黄色が誇らしげに見える。

 

見渡す限り群生した向日葵が澄み切った青い空に向かって咲き誇り、太陽は惜しげもなく金の日を降り注ぐ。

 

 

 

 

同じ髪の色をした男が、振り向き儚く笑った。

 

透明の笑みを。

 

 

 

 

買出しに付き合わされた俺は、自分の周りの空気が黒く苦しいと感じた。

ここ数日、どれだけの命を奪い取っただろう。明け暮れる戦闘の毎日。甲板が赤黒く染まり、浴びた血はヌルリと忌々しいほど熱い。

無論、それこそ俺が強くなる為の糧となるモノだ。願ったりと叶ったり言ったところだが、同じ船のコックも同じだけその脚で命を吸い取っているのに、何故こんなにも透明でいられるのだろうか。

 

気付いた時には、痩身の男を大地に押し倒していた。

力強い大地の茶色と生命力溢れる緑の茎。そして、倒れてもまだその鮮やかな花弁の色は黄色い。

その上に広がる金髪と黒のスーツ。抵抗なく見詰めるアイスブルーは、どこかで俺を非難しているのか。それとも、俺が背負うべき罪を悲しんでいるのか。

 

 

無性に押さえが利かず、言葉も無く、気遣いも無く、その男を貪った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お座なりに解した身体に俺の欲望を捻じ込み、悲鳴を上げる唇を手で塞いだ。

 

好きだと言葉にしたことは無い。

求められてもいない。

俺はコックの白い魂に甘えている。

 

だが、この男の存在は髪の毛一本にいたっても俺の物だと自負している。

誰の断りもいらない。

今抱き潰しているこの男にすら遠慮は要らない。

文句を言う奴は、赤の刀でその身を赤く染めさせるだけだ。

 

ただ好きなだけだ。

一つになりたいだけだ。

白く薄い皮膚が邪魔だ。

この男の何もかも食い尽くせば、飢餓感はなくなるのだろうか。

 

捻じ込んだ先端は、ゴリッと異質な感覚を伝えてくる。

その部分を擦り上げるたび、頭を振って涙を流すコックは耐え切れないと俺の名を呼ぶ。

甘く切なげで艶のある声。

その声に煽られて無我夢中でコックを抱いた。

 

腹の底から湧き上がってくるのは、黒い塊。

真っ白になる頭。

赤に染まる視界。

 

痩身の体内に吐き出したのは、白の欲望。

どこまでも汚れた俺の色に染まらせたくて、乾いた土を鷲掴み薄い色素の肌に擦り付けた。

 

 

 

 

幾分呼吸が落ち着き、そしてまた冷静な俺が戻ってくる。

赤茶けた大地に倒した男は、髪でその表情を隠しているが、僅かに覗く顔色は土で汚れた青白い頬に目元を赤く染め息を殺して涙を流していた。

 

「サンジ」

 

俺の声にピクリと反応したコックは、ゆっくりと顔を俺に向け閉じた瞼を押し上げる。

冷たいブルーは、そこにない。

ただ、柔らかな青が俺を映す。

 

生意気な口ばかりで何事にも張り合い引くことを知らないこの男は、どこか脆さを持っている。

他人の為に命をかける事に悪は無く、それで性を終わらせても本望とばかり自分を顧みない。

どこまでもピュアでまっさらなサンジ。

 

俺とは対照的に穢れない男。

 

柔らかく笑ったコックの瞳に全てが許されると思う。

誰に許しを得る必要など無いが、自分の汚れきった存在が全て浄化してサンジの色に染まっていく気がする。

 

「ゾ……ロ……」

 

掠れた声とともに長い指が俺の頬を軽く触れ、その場所から一気に俺は無色に替わる。

その行為がどこか儀式のように神聖で、俺は静かにサンジの額へ祈りの口付けを落とした。

 

 

 

 

2008 07 10