エデン(楽園) |
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「悪いな、ネエチャンが居ない時に長期出張が重なっちまって。」 「あのなぁ……ロビンちゃんは、仮にも自分の奥さんだろう?『ネエチャン』って呼び方をいい加減止めたらどーだ、このクソオヤジ。兎に角、空港に着くまでの間に朝食喰えよ、皆の分も入っているから。」 ワゴン車の中で待っている部下たちに笑顔で挨拶したこの家の長女は、父親を車へと蹴り入れ、手に持っていた数本のペットボトルが入った袋を押し付けた。 「茶と珈琲とコーラが入っている。向こうに行ったら皆に迷惑かけんじゃねーぞ!」 「あぁ、分かった、昨日から何回その言葉言ったよ?」 「サンジちゃんは、まるで監督のお母さんだね。」 「フランキーよりサンちゃん連れて行ったほうが良いんじゃない?」 親子の話を聞いていたキウイとモズが突っ込みをいれ、その言葉に他の仲間たちがドッと笑う。 母親が四ヶ月前から考古学研究のため海外へ出かけ、その上、今日から父親であるフランキーが、一年間の長期スパンで発展途上国支援の為出掛けてしまう。そんな状況下の中でサンジは、穏やかに優しくこれから出掛ける者達に笑顔を見せた。 若干十七歳の少女が見せる笑顔は、幼さが僅かに残り大人の艶が含まれている。未完成の少女が作る雰囲気は、脆さと力強さがかね備わった魅力があった。後部座席に座っていた男達の数人はその姿を眼福とばかり窓ガラスにへばり付いて眺めていた。 「じゃぁ、何かあったら連絡入れろ。」 「ロビンちゃんとクソヤンキーが同じ時期に家を明けるのは始めての事じゃねーんだから大騒ぎするな。それより早く出ないと搭乗手続に間に合わなくなるだろうが!」 叱咤して車へと追い立てるサンジは、口角を上げて穏やかに笑って見せた。 「何の心配もいらねーから、頑張って仕事上げてこいよ。」 その言葉と共にスライドドアを閉めたサンジは、運転席にいる男へ合図を送り、車を出発させた。 見送る少女は、その小さな影がなくなると、小さく息を吐き静かに家へと入っていった。 リビングに繋がるドアを開けたサンジの視界へ飛び込んできたのは、寝ぐさい姿のままソファーに座る長男の姿。休日の朝とはいえ、家長が長期不在になる時ぐらいは起きて挨拶の一つするべきだろうと内心思うが、言う相手がゾロだけにサンジは小さく息を吐き出しその感情を内心に押し込んだ。 「アイツは出掛けたのか?」 「たった今な。」 さして関心のない口調で話を振ってきたゾロにサンジは朝食を用意する。 父親に持たせたおにぎりと卵焼き、浅漬けとお茶。簡単な食事だが、終日自宅で寝ているだけのゾロにとっては十分すぎる。 「今日は家ン中静かだな。チビ共はどうした。」 出されたおにぎりを口に運びながら、テレビに流れる朝のニュースを見ているゾロ。最後の言葉を口にすると、チラリと視線だけサンジへと運んだ。そんなゾロの態度は何時もの事で、サンジは顎で壁に掛かったホワイトボードを指す。 この家は、大手建設会社に勤める父親フランキーと、年の九〇%を海外で生活する考古学者の母親ロビン。スポーツが盛んな私立高校三年生のゾロ、近所に在る進学公立高校二年生のサンジ。それと、小学五年生の双子ナミとルフィの六人家族。 家族の行動を把握する為に、父親が壁に一週間の家族行動表を設置した。それがホワイトボードだ。 ボードには、父親の欄に来年の五月まで海外出張にて不在と書かれており、その隣の欄の母親も同じように長期不在と書いてある。二人の違いは、母親はいつになったらその調査が終了するのか分からない事ぐらいか。 ゾロの言ったチビ共二人事ナミとルフィは、今日から2泊3日の高原学校で不在である。前日から興奮状態だった末っ子のルフィは、6時に学校集合だというのにも関わらず、朝の4時前から起きてそわそわしていた。双子の姉であるナミは、そんな弟に呆れながらそれでも楽しみにしていたイベントに心躍らせて出掛けて行った。サンジの作った昼食用のおにぎりを持って。 ゾロはボードを眺めながら、確かそんな事言っていたと思い出したが、さほど興味なく流れるニュースに視線を戻した。 「じゃぁ、俺も出かけるから。」 「あぁ?」 エプロンを外したサンジは制服姿だ。 今日は土曜日で学校は休みのはず。補習にしては手に持ったバッグは小振りのボストンバッグ。ゾロの目がスッと細められた。 「書いてあるだろう、今日から1泊で『天文部の合宿』だと。昼食は冷蔵庫に入っているから温めて喰え。夜は友達の家にでも言って飯食わせてもらえ。」 「てめェが作ればいいだろうが。」 「バカかてめぇ!ちゃんと腐った目を見開いてボードを確認しろ。俺は合宿で家にはいねーんだぞ?作れっこねーだろうが。」 「行かなきゃいいだろう。」 椅子から立ち上がったゾロは、無表情のままゆっくりとサンジに近づく。さながらそれは、草食動物を追い詰める肉食動物の気配にも似ていた。 「誰もいない家にお前と2人きりだ。誰にも遠慮する事無く大きな声で『啼ける』だろうが。」 その言葉にサンジの顔がカッと朱に染まる。全身に力が入り奥歯をギリリと噛み締めた。足を止めないゾロから間合いを確保する為、サンジが少しずつ後退する。 「ふざけた事言ってんじゃねーぞ、クソミドリ。前にも言ったよな、俺はてめぇとセックスしないと。」 「それがどうした。」 サンジの言葉など聞く耳がないようだ。歩みはゆっくりと、だが確実に追い詰めていくゾロの瞳は、暗く輝く。 「誰もお前の意見なんか聞いてねー。」 一歩を大きく踏み出し、一気に間合いを詰めたゾロは、バッグを持つサンジの手首を握った。 「チッ!」 舌打ちと共にサンジが動く。 握られて手首をそのままに、今度はサンジがゾロの踏み込んだ足の甲に乗り動きを封じると、空いた脚でゾロの鳩尾に膝蹴りを入れる。 一瞬顔を歪めたゾロだったが、ゾロも空いた片手でサンジの後ろ髪を鷲掴み、戦闘的な色を見せる顔を上げさせた。 「じゃじゃ馬、いい声で啼け。」 ゾロがサンジを『対象』として見たのは高校一年生の頃だったと思う。それまでは、生意気な一つ年下の妹と言うポジションだった。 近所の世話好きで噂話しの好きな女達は、何をするのも一学年下の妹と比べた。スポーツも、勉強も。 特殊な家庭環境だったゾロの家族は、いつでも近所の井戸端会議最優先議題となっている。その事については小さい頃から気付いていた。それでも、世間の目など気にするタイプではないゾロは、スポーツの分野でその世代を代表すると言っては過言ではない成績を収め、井戸端会議の議題を増やした。 だが、負けず嫌いのサンジはどうだったか。何時からかサンジは、一学年上の長男とは違い習い事をするわけでもなく家に篭った。いや、篭ったのではなくサンジは多忙な両親の代わりに、掃除洗濯、食事造りに買出し等。所謂主婦業を1人でこなした。世間の同い年の少女達が色々と目移りする映画やファッションそして芸能界、写真に携帯電話。何一つ欲しがる事無く、嫌な顔一つする事無く小さな兄弟の面倒も看ながら毎日を淡々と過ごした。 ゾロが部活を終えて帰宅すると、温かな料理がテーブルに乗せられており、双子の兄弟は早々と風呂に入って、大好きな飲み物を姉に貰って和やかにテレビ観賞。僅かに手の空いた深夜の時間帯は、自室に篭もり学校から出された宿題をしていた。 それもきっと己の為ではないとゾロは思う。世間の目がサンジを品定めしているからだ。『あの家の子供は、両親が不在だからどうしようもないバカな子供達だ。』と言わせないために。頑張って良い成績を収め、両親が、家族が褒められる為だけに。 サンジが中学生に進学した時には、己の欲を殺し全てを家族に捧げていた。幼い頃『大きくなったら……』と飽きるほど聞かされた毎度変わる将来の夢も、いつしか口には出さなくなった。高校進学の際も、先生からはサンジほどの成績があれば自宅から四〇分ほど離れた所にあるエスカレーター式の私立高校に推薦するといわれたが、サンジの出した答えは家に近く学力ランクは高い公立高校だった。 当初自分と対極にいるサンジをゾロは毛嫌いしていた。善い子面するサンジを見ると吐き気がしたのだ。だが、気付けばいつもサンジを意識していた。 学校の休み時間、キャーキャーと黄色い声を出すクラスの女を見ていると、黙々と家事に勤しむサンジの穏やかな表情を思い出した。街を歩くと、ゴテゴテに塗りたくった化粧面を晒して歩く、馬鹿な同い年くらいの女を見て早朝洗濯物を干しながら笑うスッピンのサンジと比べていた。放課後の楽しい時間、友人たちの誘いを断り一人夕飯の買出しへと急ぐサンジを見てきた。 所属する部活の大会に両親の応援はなかった。それを淋しいとは思わなかった。それは、サンジが朝早くからゾロのお弁当を用意し、幼い兄弟を連れてスタンドから応援してくれていたから。綺麗なユニホームにゼッケン。全てサンジが用意してくれた物。惨めな思いなど一つもしてこなかった。 唯一彼女が口にした願いは『高校に入学したら部活動をしたい』といった事。それも『家族には迷惑が掛からない程度にするから』と付け加えて。 気付けばサンジだけを見ていた。末弟は、我がままだが元気良く誰からも愛される性格で、夏の日差しのような少年だ。ゾロに懐く姿は小さな子犬のようで、可愛いと思う。次女のナミは、こましゃくれた性格だが、家族を思い信念を貫く。その姿は、夏の日に鮮やかに咲き誇るグラジオラスに似て艶やかで、力強い。兄を兄と思わない態度に腹を立てることもしばしばだが、歳の離れた妹を心の底では周囲に自慢していた。だが、同じ異性の兄弟でもナミに対する感情は、サンジに持つ想いとは全く別物である事は分かる。あくまで妹であって性欲の対象ではない。 風呂上りや寝起きの顔、唇を舐める仕草や首筋に流れる汗を拭く姿。何気に流れてくる視線すらゾロの心を揺さぶる。 もう駄目だ。 サンジへの想いに気付いた時には、ゾロはサンジをいつ強姦するか分からないほど煮詰まっていた。 ゾロと初めて身体を繋げたのは中学3年生。一通りの家事を終わらせ遅くに風呂へ入ったサンジは、冷蔵庫からスポーツドリンクの入った小型のペットボトルをラッパ飲みしながら自室へと向かった。 父も母も不在な家庭。妹弟は二十二時を回れば自室でぐっすり夢の中だ。サンジの隣にあるゾロの部屋の電気も消されている感がある。今日も無事一日が終わったと安堵の気持ちで自室の扉を開くと、サンジのベッドの上で胡坐をかくゾロの姿が目に飛び込んできた。 「家の中で迷子か?藻はさっさと海底に帰れ。」 濡れた髪をタオルで乱暴に拭きながら、勉強机に足を向ける。まだ今日の宿題は終わっていない。受験勉強もしなくてはならない。何の為にゾロが自室へ足を運んだのか等気にしている時間はなかった。 遠慮なくドカリと椅子に腰をおろしたサンジの背中に、兄からの言葉は一言もない。不気味ではあったが敢えて無視をしたサンジは、次の瞬間心臓が止まる程の驚きをむかえた。 気配なく近付いたゾロは、サンジの口に大きな手を当てて声を封じる。力ずくで椅子から立たされ乱暴にベッドへと身体を投げられ、大声で怒鳴ろうとしたサンジの口を再度手で覆ってきたのだ。 訳が分からない! サンジの素直な感情だ。ベッドに押し倒されている事も、馬乗りになり口を封じ暴れた手をひと掴みにされた事も。兄の取った突拍子もない行動も、ギラギラとした危ない瞳の光にも。サンジはただ恐怖を感じた。身を捩って抵抗するが体重を掛けられてゾロの下から逃げ出す事はできない。声を出しても篭もった音が漏れるだけで意味を成さない。 バクバクと心臓が音を立てる。風呂上りの厚い身体に嫌な汗が流れる。脚をバタつかせて最後の抵抗を試みる。 「そんなに暴れているとナミやルフィが起きるぞ。見られてもいいのか?てめェの穴に俺のチンコが突っ込まれている様を。」 ヒュッと音を出して息を吸い込んだサンジの瞳は、これ以上開き事は無いというほど大きく見開き、ゾロの顔を見ている。口角を僅かに上げたゾロの表情は危険で男臭かった。 抵抗する身体を組み伏し、パジャマのズボンと下着だけを剥ぎ取り慣らしもせずに入れた。濡れていない膣内は、ゾロのペニスが引っ掛かり初めて肉を割られる痛みと共に快楽とは無縁の感覚をサンジに与える。口の中に詰め込まれた髪を拭いていたタオルは、唾液と悲鳴を吸い込み、流れる涙はシーツが吸い上げた。 何故?どうして? サンジは恐怖と痛みと混乱で今時分に何が起こっているのか考える事ができない。遠慮なく動き始めたゾロによって、引き攣った痛みが徐々に消え滑る体内でなにか違うものを生み出し始める。気持ち言い感覚など無い。初めてのセックス、ピストン運動だけの行為で快楽をためられる身体ではない。しかし、子宮に当たるゾロのペニスの先によって少しずつだが痺れに似た感覚が徐々にサンジを支配する。 兄に身体を串刺しにされる行為の意味や、神を畏れぬその行為に恐怖し、この事が二人以外に知られた時の結末など悲しすぎる感情に涙した。 それ以上に、ゾロに犯されているこの状況を嬉しいと思う俗悪な感情に驚いた。 サンジはゾロを特別な感情を持って接してきた。同性のナミ対する姉妹感情とは掛け離れている。異性姉弟であるルフィに対する感情とも違う。父母に対して抱く情とは全く違っている。しかしその感情に名前は要らなかった。敢えてそれ以上踏み込むのはいけない事だと何かが体の中で訴えている。サンジはそれに習った。決してその感情を深く追求してはならないと。 だから、この状況で嬉しいと思う鬼畜めいた感情に驚いたのだ。自分は実兄を愛しているのだと。しかし、その想いを貫けば、家族の崩壊もゾロの人生の崩壊も全て簡単に予想がつく。 表面上は必死に歯を食い縛り漏れる声を喉で殺し、頭を振って最後の抵抗を表す。 愛しているのだ、ゾロを。誰よりも。 『空が落ちてきて、地が割れて、世界最後の日に一人だけ傍にいてくれるならと誰?』と教室で友人たちと他愛も無い話をしたことがある。その時思い浮かんだのは自宅のサイドボードの飾られた家族写真。家族が好きだから、大切だから当然と。当時サンジは思った。しかし、実際にはその写真に写る全ての人間ではなく、唯一人を思い浮かべていたのだ。 だから絶対にこの想いは終わらせなければならないと、サンジは溢れる涙を別の理由に変えてゾロを否定し続けた。 「いいぃ……、あっあっあっ」 「もっと善がれ、壊れるまで動いてみろ。」 床に寝たゾロの腹の上でサンジが艶やかな声を出し揺れている。倒れないように二の腕を掴まれ、下から遠慮なく突き上げられる。勝手に腰が揺れてゾロを感じようと膣が収縮を繰り返す。 涙を流す青い瞳はしっかりとゾロを捉えて放さない。何度も高みに上げられ落とされ、唇が痺れるほどの快楽を強制的に与えられて、朦朧とした意識の中で涙を流し快楽を受け入れている。 涙を流しながら恍惚と受け入れる感情には、兄妹同士のセックスであるモラルや、親妹弟裏切る罪悪感。善がり啼き乱れる羞恥心よりも巨大な想いがサンジの中に蔓延っているからだ。だって誰よりもゾロを愛しているのはサンジ自身なのだ。 想う相手とのセックスは、体が正直に反応するものなのか。急速に襲う痺れにも似たオーガズム。誰もいない事を頭の片隅に止めている為か、いつもよりサンジの喘ぎ声が鮮やかに室内を埋め尽くす。 絶頂間際に抜かれたゾロのペニス。行き場の無い感覚に襲われるサンジを尻目に、ゾロは痩身を押さえ込み強制的におこなったクンニリングス。ビクビクと強張る。体にゾロは、必要以上に性器を舐め、指を入れ陰核を摘み歯を立てる。 いつも以上に感じているサンジに、卑猥な言葉と屈辱的な行為を更なる快楽の手段として用いた。 「入れて欲しけりゃ、脚開いて穴を指で引っ張って見せてみろ。」 その行為に羞恥と怒りを感じるサンジは、大きく頭を振って拒絶するが、膣内に挿入されている指でスポットを弄られれば、指だけでは物足りないと涙を流し腰をくねらせる。 「俺のチンボが欲しいんだろう、淫乱。」 耳元で囁かれるゾロの声。大好きな大好きな低い声。 ぞくりと体を震わせたサンジは、ゆっくりと膝を割り己の両手でゾロが弄る性器を大きく左右へと広げた。 「『ちんこを下さい』って言えよ。そうしたら入れてやる。」 「……だっ、」 「聞こえねーぞ」 性器から手を離し、涙を流すサンジは、声にならない声で「嫌だ」と否定する。まだ抵抗するサンジに引導を渡す為、ゾロはサンジの脚を両手で持ち上げ、そのまま頭の方に持って行き恥部が持ち上げられた状態にする。所謂「まんぐり返し」。恥辱感を与えられ、陰部を捏ね繰り回され、サンジは何度目かの絶頂を向かえた。 ゾロはハクハクと息を吐き出すサンジに、再度同じ言葉を投げる。 「『ちんこを入れて下さい』って言えば、もっと気持ち言い思いが出来るのをてめェの体は知っているだろう。」 まるで泣き止まない子供をあやすような優しい声色。 この苦しい状態から助けてくれるのはゾロしかいない。と錯覚させるような雰囲気にサンジのプライドが折れた。 「ちょうだい……、ちょうだい、ゾロの、ゾロのちんこ……」 「どこに欲しい。」 「俺の中に。」 「中?口の中か?」 必死の訴えに意地悪な言葉が返ってくる。 「俺の……中、……ゾロッ。」 悲鳴に似た声でサンジは訴える。羞恥に頬は赤く染まり、恥辱に涙が止まる事はない。僅かに笑みを作ったゾロは、隆起したモノをサンジにあてがい一気に挿入した。 「奥までくれてやる、有難く感じろ。」 遠慮なくガツンガツンとサンジを打つゾロは、時折ヒクリと腹筋を震わせ熱い息を吐きだす。 ゾロは、これほどの快楽を与えてくれる体をサンジ以外知らない。一時期サンジから離れる為に、好きでもない年上の女と付き合ったことがある。見目が良いだけの女。その女を見て勃起はするのだが、頭の芯は醒めていた。セックスをしても残るのは空虚な心。そして、サンジを思い浮かべるのだ。 忍ぶ恋など偉人には不向きだ。欲しいものは実力で奪ってきたゾロにとって、サンジからはなれて暮らすことの苦痛は耐えがたいものがあった。だから動いた。言葉ではなく行動で。 涙を流し抵抗するサンジを組み伏して思う侭翻弄した。啼いて泣いて。懇願されてもサンジを放すことが出来なかった。 強制的な行為の後、放心状態のサンジにゾロは、「てめェは俺のものだ。」と囁いたとき、サンジはその言葉を硬く目を閉じる事で拒んだ。何度も言葉を吐き出そうとする薄い唇は、己の歯で噛み封じる。 心に秘めたサンジの想いは憎しみなのか喜びなのか、それとも恐怖なのかはゾロには分からない。いや、判る必要は無い。 サンジ自身どれほど否定しても、サンジは自分のものだと『決めた』のだから。 一度目の射精をサンジの体内で吐き出したゾロは、まだサンジの中に留まったまま、傍に落ちているサンジのバッグから携帯電話を取り出した。メモリに入っている電話番号から馴染みの名前を探し出し電話をかけた。 『はい、サンちゃん?おはよう、今日の合宿よろしくね。』 電話口に明るい男の声。声の持ち主は、サンジの所属する部活の部長を務めるエースは、ゾロの中学生時代の同級生でもある。 「エース、久し振りだな。」 『ゾロ?どうしたよ、久し振りだなぁ。元気だったか?』 「あぁ、まあまあだ。」 適当な挨拶をしながら、ゾロは再度緩やかにサンジの体内を掻き回し始める。朦朧としていたサンジだったが、ゾロの声に反応し正気を取り戻すと、自分の電話を取り戻す為上半身を起こしたサンジに気を止める事無く強く奥へと己を打ち込む。 「ひぃ……あぁ……」 快楽の残る体が素直な反応を示し、背を反らし床へと倒れる。すぐ傍で掛けられている電話の向こうには、部長がいるのだと思い出し、サンジは慌てて両手で口を塞いだ。 『……いま、何か悲鳴が聞こえたような気がしたけど?』 「あぁ?俺は聞こえなかったが。」 『そうか?で、珍しく電話なんかどうした。』 ゾロが与える膣内への性交を感じ取りフルフルと震えるサンジを一瞥し、ゾロは口を開いた。 「アイツ、昨夜から調子悪いのに下のガキ共の合宿の準備や、フランキーの出張準備なんかを殆ど徹夜でやっていたから貧血起こしやがった。」 『サンちゃんが?』 空いた手をサンジの顔の横につき、ゾロはスピードを上げサンジを突く。時折腰を回しサンジの中を掻き回したり、入り口近くで小さく動いたりと変化をつけてピストン運動をする為、翻弄されるサンジは対応しきれず抑えた口から喘ぎ声を洩らした。 「ゆっくり眠れば大丈夫だろう。悪いが今日の合宿だが」 『分かった、サンちゃんはお休みだな。大事にしてやれよ。』 「悪いな。」 電話を切ったゾロは、携帯をソファーへと投げ本格的に自分の快楽を追い始める。 口元を押させた両手を外し床へと縫い付ければ、押さえる事の無い理性を失った甘い声が出される。 「あっあっ、あぁああ!ひぃ!」 「てめェの好きな所に届いているだろう。」 ボルチオ器官にゾロの亀頭が当たるたび、ガクガクと頷き何度も襲う快楽の波にのまれていく。流れ落ちる涙は、サンジの気に入っている床のラグへと吸い込まれ、小さなシミを作った。 「気持ち良過ぎて啼いているのか?それともアイツに会えないから泣いているのか?」 突然の質問にサンジは硬く閉じた目を開き、ゾロを見上げる。どこか苦しそうな、辛そうな表情を浮かべたゾロにサンジは口を数度開けただけで。まともな返事が出来る状態になく、まだ秘めた恋心を口にしていない今が辛いのに、何故エースの事が出てくるのかサンジには理解できない。 「ん、んんっ…」 所属する部活動の長に何故か嫉妬するゾロの不安を取り除きたい。『好きなのはてめェだ。』と一言いってやりたい。だが、想いを口にしようとする度、サンジの外へ出るぐらい一旦退いては、最奥まで一気に捻じり込まれる行為に、声は割れ嬌声しか出す事ができない。 「ぞっ、ぞろ……!」 普段の生活内で想いを言葉に出せば、全ての破滅が待っている。こんな時に出す言葉なら言い訳などいくらでも出来る。何かに不安を感じ散るゾロに、愛で安らぎを与えたいと思う。 実際は、荒い息と高い艶のある声だけが口から出るばかりで、何一つ前に進まない。ゾロの動きは加熱を帯び、唯同じ熱を貪りあう獣のように愛し合った。 「サンジ、お前を誰にも渡さない。俺の……俺だけのものだ。」 「あっ、やぁ、んんっ…っ!!」 切羽詰った声ゾロの声が耳に届くと同時に、体を強直させたサンジは意識が途絶えた。 腕の中、気を飛ばしたサンジを見つめゾロは薄いサンジの胸に顔を埋め、深い溜め息をついた。 サンジを追い詰める気持ちなど更々無い。出来れば愛でて優しく愛を語り、この手で幸せだけを与えたいと思っている。こんなにも誰かを愛したことなど無いのだ。盲目的になるほど自分は『愛』や『恋』に憧れも無い。ただ、サンジが絡むと我を忘れる。エースとサンジの中も単なる先輩後輩の中だと分かっていても、絡まずに入られない。 もし、サンジとの関係が世間にばれてしまったら、この家族は崩壊するだろう。しかし、親妹弟が不幸を見ようとゾロは構わないと思う。バラバラになるのならばサンジを連れて思う地へと行けば良いだけの話なのだ。 サンジを幸せに出来るのならば、全てを薙ぎ払ってでも前に進む。たとえその地がゲヘナの地であったとしても。 ゾロにとってサンジがいればエデンなのだから。 |