ぎゃんぶる of あホリデー

 

 

 

 

 

 

 

まーる様へ 投稿作品

 

賭け事の内容

12.(ゾロ)の前だけで水着姿を見せること】

 + ゾロの前でストリップ?して誘い受け??

 

 

まーイラスト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ぎゃんぶる of あホリデー】

          by 南玲奈

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーカンな太陽がこれでもかと強烈な日差しを送るここ高級リゾート地。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この船のコックのお陰か食卓以外貧乏を絵に描いた生活を送る海賊達が居るには、余りにも不似合いな高級ホテルのプライベートビーチ。これまたセレブには程遠い海賊達が波打ち際で無邪気に遊んでいる。

先の島でこの船の狙撃師が獲得した副賞に、隣島の『高級ホテル&プライベートビーチにご家族様(5名様)ご招待券』が無ければ、この海賊団がここに居られる理由は無いだろう。

 

 

 

 

 

貸し切りに近い状態プライベートビーチ。白と青の海が日頃何かとトラブルを抱え込む海賊に安らかな休日を与えてくれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……筈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレンジの髪を束ねた航海士ナミは、何処から持って来たのだろうかビーチボールを青の空へと打ち上げる。

普段クールービューティーな考古学者ロビンは、悪魔の実の能力者なので海にこそ入らないが、ナミの打ち上げたボールを笑いながら受け止めている。

 

2人のその姿は、普段では有り得ない程子供のようなはしゃぎぶりで…。

 

 

 

 

 

その前を3人の男達が走っている。

 

ルフィにウソップ、チョッパー。

今時ベタな小説でもこんな馬鹿な遊びはしないだろう、3人組。

 

「にししし、捕まえられるもんなら捕まえて見ろ!」

「待てーー!」

「待てよ、このヤロ〜〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別に5人が、暑さのせいで脳味噌が沸騰した訳では無い。いや、思いきって沸騰する方がある意味幸せなのかもしれない。

 

 

 

 

その理由は、先程まで食事をしていた場所で繰り広げられている光景を、スッパリ意識から切り捨てる事が出きるからであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――― side  sanji

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンジは目の前の光景を冷めた目で見ていた。

まるで他人事の様に映るのは何故だろう?とのんびり考えてもいる。

 

 

 

先程までシートに昼食を広げ楽しんでいた場所を後片付けし、さて海に入りひと泳ぎするかと立ち上がり掛けた時、仲間が日差しの中楽しく遊ぶそれを木陰で酒を飲みながら見ていた男が、何時の間にか隣に立ち自分をジーっと見ている。

 

「……何ジロジロ見てやがる?」

「コック、勝負しねーか?」

 

無表情の剣士が言った言葉の意味も掴めず取り敢えずギッと睨むが、ゾロは綺麗な柳眉を片方だけ器用に上げニッと不敵に笑って見せる。

 

「コラ、藻。人語喋れってーんだ!!いったい何の勝負だ!?」

「てめェが勝ったら俺はてめェの言う事を一つ聞いてやる。俺が勝ったら俺の言う事を聞け」

 

偉そうな態度がかなりムカツク。

 

「俺はこれからナミさんやロビンちゃん達と優雅に遊ぶんだ。なんでてめェに関わっていなきゃいけねーんだ!!」

「それが恋人に向かって言う言葉か?」

「誰と誰が恋人だ!このクソマリモ!!」

「未だにそれを言うのかクソコック!」

「……勝手に言ってろ」

 

目を細めて怒りをこめかみに表すゾロを無視し、サンジは砂浜から立ちあがりクルリと背を向けた。

 

「逃げる気か?」

「はぁぁぁ!!誰が逃げるか!」

 

売り言葉に買い言葉は何時もの事。

結局ゾロの策略にまんまと乗せられたサンジは、ジャンケンと言ういたってシンプルな勝負を受ける事に成った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、何故こんな光景が目の前に在るのだろうとサンジは煙草に火を着けながら再度考えてしまう。

 

 

 

目の前の剣士は、まるで好敵手はたまた強敵を迎えた如く頭にバンダナを巻きサンジを睨み付ける。3本刀を持っていない方が違和感を感じた。

 

 

 

――― 相手が妙にテンション高けーと…引くよな。

 

 

 

今にもグルグルと唸りそうな雰囲気のゾロを、サンジは小さな溜め息付きで肩を落とし項垂れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『誰と誰が恋人だ!このクソマリモ!!』

 

 

 

 

 

 

確かにあの言葉は不味かったのかもしれないと内心反省はしている。

 

 

 

何時からだろう。ゾロからの積極的なアピールを無下にして数ヶ月、始めのうちは言葉で

 

『俺の人生はレディーとのラヴィアンローズな輝かしい未来でうめ尽くされてんだ!てめェなんて眼中じゃねー!!』

 

とキツイ言葉で断った。

 

しかし、それにもめげず横柄な態度ながら

 

『好きだ。俺のモノになれ!』

 

としつこく言いうゾロを無言でグランドラインへと蹴飛ばし続けた。

 

また、時を選ばず言い続けるゾロを回りがヘキヘキとしながらも応援し、無視し続ける事も難しくなり…。一度本腰を入れてじっくり話し合おうと、夜のキッチンで酒なんかを振舞ってしまったのが運の尽き。

ゾロに飲ませるつもりの酒をシコタマ自分が飲まされて、気付けば流され人には到底言えない不埒な関係になってしまった。

 

 

ではサンジが剣豪に愛を囁くかと言えばそうでは無い。

どちらかと言えば戸惑っているのだろうとサンジ自身は思っている。

 

 

 

 

気持ちが追い付かず、身体が先行する関係。

 

 

 

 

かと言って、サンジはゾロを嫌いでは無い。正直言えば船の中で一番気にしている存在なのだ。

それが『愛』なのか、ただ一番手の掛る存在の為に『仲間』としてのスタンスを狂わせているのか?今の彼にはどうとも判断がつかない。

 

 

 

 

皆が認める公認カップルとは言え、いまいち自分の心に自信が無いサンジは、怪人魔獣ミドリ腹巻を冷静な眼差しで眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――― っ!!」

「俺の勝ちだな!!」

 

破顔する男は、普段無愛想だと思っていたが以外と年齢相当の笑顔が出来るらしい。グーで勝ったその拳をさらに強く握り締め、「うっし!!」と声を上げている。

 

一方負けたサンジは、チョキの手を緩々と戻しながら咥えた煙草のフィルターをギリッと噛み締めた。

文句の一言でも言ってやろうと思い、開き始めたその手から視線を上げて目の前にいる剣士を見る。しかし、何をそんなに嬉しいのか、少年の様に笑うその顔を見ると言葉が詰ってしまう。

 

 

 

――― どーすっかな?

 

脱兎の如くここから逃げるってーのも在りか?などと喜ぶ剣士を他所に、首を傾げるサンジ。何をさせられるのか冷や汗物の現状から、一刻も早く逃げ出したい気分だ。

 

「コック!」

「………何だ」

「てめェは、今日1日俺以外の人間に水着姿見せんな」

「……………は?」

 

ポロリと口から落ちた煙草は、砂の上で未だ紫煙をたなびかせている。

 

 

 

 

キョトンと目を開き目の前の男を見詰めるそのアイスブルーを、ゾロは皮肉交じりに笑いながら再度それを口にした。

 

「だから、てめェは今日1日俺以外の奴らに水着姿見せんじゃねーぞ!勿論、水着になる時は俺の前で脱げよ」

 

 

 

 

 

 

 

「…………はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

間抜け面も良いところだろう。

目の前の剣士はあんぐりと口を開いたコックを笑って見ている。

 

そんな情け無い表情がゆっくりと怒りの形相に変わった。

 

「ふ…フザケンナ!!なんで俺が ―――」

「賭けに負けたからだろう」

 

余裕で言葉を言わせないゾロに、サンジは小さく舌打ちする。

 

 

 

海上生活が長いコックは、この麦藁海賊団きっての泳ぎの達人だ。誰もが見惚れるその優雅な泳ぎ。力み泳いで入る訳では無いのに、スピードも在る。

サンジ自身海で泳ぐことがとても好きだし、ゾロもその泳ぎを見る事が好きなはずだ。

 

 

 

 

何に…何故泳がせてもらえないのか!?

 

 

 

 

理不尽な怒りが沸沸と込み上げて来る。

しかし、負けた事は撤回できない。この朴念仁は、言い出したら聞かない。いや、在る意味潔く引く時は引くのだが、この手の事に関して引くことは絶対無いだろう。コックには解かっている。

 

そのくらいゾロを見て来たのだ。

 

 

 

 

――― まぁ…、泳ぐ場所は幾らでもあるからな。

 

 

 

 

剣士の目を盗み、違う場所で泳ぐのも良いだろう。先程宿から歩いている最中、地元の子供達が海水浴に行くのだろう仕度を持って走っていく姿を確認している。

プライベートビーチの様に浜辺は綺麗では無いかもしれない。海だって汚れているかもしれないが、泳げないよりはマシだろうと再度気を取り直してパーカーのポケットから煙草を取り出そうと視線を下げた。

 

「てめェ…何考えている?」

 

低い声のゾロが不穏な空気を撒き散らす。

嫌な予感と共に顔を上げれば、間合いを詰めたゾロの顔が眼前に見えるでは無いか!!

 

「――― !!」

 

近すぎるだろう!との抗議の言葉の前にサンジは右膝をゾロの脇腹へと向けていた。予測していたのか剣豪は、左手でその膝をガッチリと掴む。

空いた右手でコックの細い腰を引き寄せ更に顔を近付ければ、慌てたサンジがゾロの頭を押し遣った。

 

 

ホテルのプライベートビーチと言えども、ここには麦藁海賊団以外の人だって居るのだ。イモ洗い的に混雑している訳では無いのだが、確実に見知らぬレディーがホワイトの露出高めビキニなんかを着けちゃったりしている。

ウハウハ物のご馳走様なトップレスちゃんも居る。

勿論野郎だって居るのだが、サンジビジョンには麗しいレディーしか見えていない。

 

だからこんな所で不埒な行ないをし掛けて来たゾロをサンジは必至に突き放す。

 

しかし、サンジが押した方向と違う角度でゾロは動いた為、手は空を切り視界には白の砂浜と、遠目に見える優雅な上流社会層の方々のリラックスタイムばかりが映るばかり。

 

ミドリ頭を探しサンジは視界を下に向ければ、ゾロが自分のパーカーを大きく開き、首から下げた銀のプレート横に唇を寄せている。

 

「――― ???」

 

何が起こっているのか咄嗟に判断がつかず、暫し呆然とその光景を見れば、チクリと左胸に痛みが走った。

 

「……ゾ……何してるんだ、エロ藻君??」

 

怒りに声が震えるのを何とか堪えて問いてみても返って来る言葉はなく、頭が上へと動き左胸にある小さな飾りをザラリと嘗めた感覚がサンジを襲う。

慌てて髪を掴み引き離そうとすれば、更に頭が上へと上がりカリッと鎖骨を噛まれてチクリと吸い上げられる。

 

 

「これでヨシ!」

「!!!!!」

 

身体を離し自分の付けた所有印を確認し満足げな剣豪は、極悪面で笑っている。

唖然と佇んでいたサンジは、慌ててパーカーの前を合わせ目の前の大馬鹿エロ剣士に怒鳴り声を上げた。

 

「このアホ!こんなモン付けたら泳げねーだろう!!」

「だから良いんだろう」

「――― バッ…暫らく消えねーだろうっ!フザケンナッ!!」

 

必至声を荒げるサンジに何を納得しているのか、一人頷きゾロは頭に被っていたバンダナを自称恋人へと投げ付けた。

 

「俺はこれからアイツらとひと泳ぎして来るから、てめェはここで大人しく待ってろ」

 

 

 

全身を赤く染めて、サンジはフルフルと振るえている。

 

ご満悦な態度でサンジに背を向けたゾロは、一歩踏み出した瞬間に強烈な衝撃を背に受ける事となった。

 

 

 

 

 

 

 

「いっぺん沈んで来い!このアホ剣士ぃーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

アクアマリンの沖でポチャンと小さな音を立ててソロは海へと落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

―――――――― side zoro

 

 

 

 

 

ウソップの獲得した副賞は、家族5人分のホテル招待券だった。

朝食付きの快適なホテルは、ナミとロビンそれとゾロにウソップ、ルフィがチェックインした。チョッパーは、子供添い寝料金等というこのホテルには在りもしない特別料金をナミが設定させた。

 

……様は、タダだ。

 

 

 

しかし問題があった。

朝食は招待券内で賄えるとしても、昼食と夕食は金が掛るのだ。

 

唯でさえこの島は物価が高い。

その上ゴム人間の胃袋が半端な量の食事では落ち着かない。それだけで貧乏に拍車がかかって出航に必要なお金も無くなってしまう。

 

ならば、もう一人チェックインしていないコックを最大限に利用すれば良いのだ。と航海士は言った。

 

ホテルのビーチ内に在る管理棟などを兼ねた広々としたキッチン付きのコンドミニアム。そこを格安に借りた麦藁海賊団の経理担当は、そこへコックを押し込めた。

 

 

 

 

 

……ついでにコックのペットも押し込んだ。

ホテルで空いたベッドは、小さな船医がゆったりと使っているだろう。

 

 

 

――― まぁ、俺はコイツと酒が在れば何処でも構わないが。

 

 

 

夕食をコンドミニアムのダイニングルームで済ませれば、海賊達は個々に自由行動を取る。

部屋に戻る者もいれば、近くにあるカジノへと足を伸ばす者。探検と称し裏山へ飛び出す者…。思い思いの行動は、誰も咎める事や詮索などはしない。

普段は一人二人と残るコンドミニアムには、この時間には珍しく仮の住人であるサンジとゾロだけが残されていた。

 

後片付けを手早く済ませたコックは、同室の剣士に声を掛ける事無く砂浜へと足を向ける。

無論、黙ってそれを見ているゾロではなく、冷蔵庫内から冷えたブラウンのビンを掴み後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

遅れて砂浜へと出たゾロが見たのは、半月の月夜の中で煙草を吸い、ただ打ち寄せる波を見詰めるサンジの後姿だ。

その姿は珍しく昼間のパーカーと水着姿。何時もキッチリと服を身に纏う彼にすれば、ごく稀に見る姿である。その上、先程までキッチンに居たのだから、着替えをしているのがプライドの高いコックの姿なのだ。しかし今日はそれもしなかった。

確かに濡れてはいない水着とパーカーなのだから着替えなくても不便は無いだろう。

 

 

 

ゾロは首を傾げた。

 

 

 

キッチリ仕事をこなし、何時もと何ら変わらないその姿に隠されたもう一つの心。

泳げ無い事がそんなに悔しかったのか?当て付けなのか?ジップアップのパーカーはその肌を隠しこの暑さの中でも乱すことは無い。

文句も無く、喧嘩を売る事も無く淡々と仕事をしつつ剣士を見ないフリばかりする。

 

 

 

今の行動もそうだが、普段サンジがゾロに見せる行動が掴みきれない。

 

 

 

 

 

 

口でも態度でも自分を邪険に扱う。

それにヘコミ気後れする事は無いのだが、それにしてもその瞳の意味が解からない。SEXに雪崩れ込んで拒む事も無く、その上普段の眼差しは何処までも情に溢れている。

 

以外と照れ屋なコックが、素直に本心を曝け出すとは思わないが、それでもその行動は不可思議だ。

 

 

 

 

まるでサンジ自身が、迷子の子供の様に不安な瞳を見せる。

 

 

 

ドツボに嵌ったが如く、どうする事も出来ないもどかしい状態とでも言うべきか?

本人も気付いてはいないだろうその瞳の揺れ。

 

 

 

 

 

ジッと押し寄せる波を見ているサンジの背後でドッカリと腰を降ろしたゾロは、酒瓶を飲み干しつつ痩身の背中を見詰めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静かな波の音が眠りを誘う。

淡い光を纏った男は、まだ身動き一つせず海を眺める。

 

 

砂浜で胡座を組みウツラウツラしはじめたゾロは、銀の光に包まれた男が何時の間にか自分へと身体を向けている事に気が付いた。

その表情は、多色に変化する彼の顔では無く、感情を押し殺した無表情。

ジッと自分を見詰める瞳は、僅かな光では捉える事など出来ないほど複雑化している。

 

 

 

ダラリと下げられた腕がゆっくり上がる。

ジッパーの金具へと動いた手は、ジジジと意味の在る音をたてて降ろされていく。

 

ゾロは眠気を飛ばし、ゴクリと喉を鳴らす。

 

降ろされたジッパーから見える銀のプレートは、麦藁海賊団の魔女達からの贈り物だ。

ゾロには迷子プレートだと言い、サンジには何か小難しい事を説明していたが、それを剣士は聞いてはいない。ただ、サンジはそれを貰ってから一度も外した事が無い。

 

キラリと月の光を反射したそれの横に赤く小さな印。昼間自分が着けたそれをゾロは眉を潜めて見る。何故か他人が着けた印の様で腹立たしい。

ゆっくりと剥き出しにされた男の痩身がこの上と無くエロく、下半身を水着で隠しているのだが全裸よりも煽られてしまうのは何故なのだろう?

 

脱ぎ終わったパーカーを片手で持ち、無造作に砂浜へと落したコックは、目を細めて僅かに口角を上げて見せた。

 

 

白の肌が光る。

 

優しく頬を撫でる風が金糸を揺らす。

 

 

自分とは別の生き物では無いのかと目を疑う。

そしてコックは、視線だけをゾロに残したままゆっくり身体を捻り海へと歩き始める。

 

 

 

視線を海へと逸らす間際に声にならない言葉がサンジの口から投げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― ゾロ

 

 

 

 

 

 

 

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

膝まで海に浸かったサンジを、後ろから抱き締めて海へと引き倒した。

縺れる様に抱き締めて深いKissをし掛ければ、抵抗無くそれを受け入れるコック。

 

波打ち際まで移動してその身体を貫いた。

 

プライドの高いコックは、男を受けいるた事は黙認した様だが女の様に声を上げる事を良しとはしていなかった。しかし、今日は少しばかり違う。

リゾートの雰囲気がそうさせているのだろうか、息の切れ間に何時もより艶のある甘い声が覗く。力ずくで組み伏した男は、泣きそうな表情をしていた。与えられた快楽が強過ぎて苦しいのだろう。

汗とも涙とも…海水とも区別が付かない頬に流れるそれを、ゾロは胸が痛む思いで見詰めた。

 

 

 

 

1度目の欲を激しく出し、繋がったまま波に揺れるサンジの顔へ視線を向ければ、放心した瞳がボンヤリと夜空を見ている。

コックが激しく己の腹へと吐き出した欲は、波に攫われて跡形も無い。

何時までも自分を見ないサンジを許せずに覗き込むと、虚ろな瞳がゆっくり本来の光りを湛えて真っ直ぐな眼差しを向けて来た。

 

 

 

 

綺麗だ

 

 

 

ゾロは心から思う。

 

顎鬚が生えている同い年の脛毛男を綺麗だとゾロは思う。

自分と繋がったままユラユラと波に揺れ自分を見詰めるサンジが、たまらなく何度でも欲しくなる。

 

 

決して貧弱ではない白く滑らかな胸が、浅い呼吸の為に忙しなく上下し、その上を細波が走っている。

朱色の痣は無数に散らばり、月明かりに照らされて、一層艶めかしく感じてしまう。

 

 

僅かに顔を上げて海を見れば、男波が寄せて来ている。このままサンジを仰向けに寝かせていれば、顔に波が掛るだろう。ゾロは腕をサンジの背中へ回し、慎重に自分の膝の上へと抱き上げた。

 

 

「――― クッ!!」

 

体位が変わったお陰で繋がりが深くなったのだろう。苦しげに小さく息を詰める。

白い首を惜しげも無く抱えた男へと向け、喘ぐその姿に収まった自分の欲望がジワジワと力を増し始めていた。

 

 

サンジとSEXした事は、両手の指では余るほどの夜を過ごしただけだ。

だからだろう、受け入れる事にまだ慣れない身体は、時折苦痛を含む息遣いに変わる。

 

細い腰を掴み緩やかに上下すれば、肩に掛けた指を食い込ませるほどに力を入れたコック。

薄暗い月明かりでさえ顔を見られるのがイヤなのか、必要以上に身体を捻って逃れ様としている。

 

「………コック」

 

動きは止めずに呼ぶ。

小さな顎を掴み自分へと向けさせて、軽く唇を会わせれば、眉根を潜めた泣き顔が飛び込んでくる。

 

「…サンジ」

 

名を呼べば、ゾロ…と、唇の動きだけで返って来る。

 

「てめェだけだ。欲しいのは・…、サンジ」

「…………」

 

やはり切なそうに表情を歪めているが、先程の行き過ぎた快楽から逃れ様とする表情ではない。ゾロが今言った言葉が、繋がったサンジを苦しめている。

荒い息ばかりで返って来る言葉は無い。ただ、脱力気味にゾロの肩へと額を乗せた金髪の男は、小さく息を吐いた。

 

「コック、言いてえ事ちゃんと言え」

 

ゆるく揺さぶりながら問えば、ゾロをキュッと閉め付けながら表情を隠しつつ首を横に振る。

 

 

消え入りそうな背中に腕を回して力任せに抱き込めば、苦しいのだろう息を詰らせてその表情を見せた。

顎をベロリと卑猥に嘗めれば、薄っすらと開いた青の瞳がゾロを見る。

 

「…てめェは、大剣豪になって……俺は奇跡の海を見付けて……」

 

道が違いすぎるのだ。と、息絶え絶えに言葉を吐く。

だから、これ以上お前に近付くつもりも無いと言葉を紡ぐ。

 

「馬鹿か…」

 

たかだかそんな事で自分を受け入れないコックに腹が立つ。

しかし、その事をこの男に詰め寄っても、余計頑なに自分を遠ざける事も容易く想像がつき、ゾロは息を吐き出した。

 

「ゆっくりだな…」

 

ゾロが言い含める様にサンジへ向けた言葉を、向かい合わせで座る男は眉を潜め、眼差しだけで言葉の意味が解からないと問う。

 

「ゆっくり俺に惚れてくれれば良い。お前はぜってー俺無しで生きられねーから」

「……誰が…てめェなんか!!」

「必ずだ。だからゆっくり俺に馴染め」

 

後は無言でサンジを掻き抱く。

強く早く、己の激情をサンジの身体へ打ち込む。

 

 

 

剣士の肩に額を乗せたサンジが、言葉になら無い声で想いを伝えたのは本人しか知らない事。

 

 

 

 

 

しかしこの夜、ゾロが仕掛けた悪戯な賭け事で、少しだけ2人の心が寄り添ったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

End

(up 9 August ,2006)