『猫』を養いて自ら患いを遺す 海賊 編 第1章 |
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――― だから、その望みが俺の全てだった。 「やっ……くぅっ!!」 「…………」 「……ぞ……っ」 大きな手で両手を拘束されて身動きが取れない。 仮に取れたとして、抵抗する気も更々残ってはいないのだが。 新しい雨季が終わる頃、ゾロが突然豹変した。 虎なのに豹変するというのもおかしな話だ。と、のんびり構えていたサンジも、何時もと違うゾロの様子に震え慄く。 大人とも子供ともいえない年齢のサンジを硬い岩肌の塒(ねぐら)に押し付け、今にも捕食する瞳でサンジの首筋に顔を埋めたゾロ。 後は止めようのない川の流れのような出来事である。 大きな手は器用に身体を愛撫し、大きな口はサンジの身体をあまがみして舐めて、見知らぬ感覚に怯えるサンジを更に追い詰めた。 訳も分からないと身を捩るサンジ。 その行動がお気に召さなかったのか、手荒な扱いを度々受けた。 硬くて大きな手は、小さなサンジの顔を数度平手で殴る。 脳ミソが揺す振られてクラクラと風景が歪む中、顎を強引に引き上げられて息が詰まった。 出血を伴うぐらいに胸を噛まれ、反応した男根の根元を長い指で掴まれて溢れ出る欲望を塞き止められる。 サンジを傷つけないように固い蕾に指を入れて、好きなように掻き回され。 ビクビクと細かく痙攣するサンジの身体。細い手足は、意思とは無関係に突っ張り、そして弛緩する。 そんな羞恥を見られている事も把握する事が今のサンジには出来ない。そんな余裕は何処にもない。 ある一部を太い指で擦り上げられて、あられもない声を出し続ける。 頭に血が上りすぎる。 身体が沸騰する。 木々の隙間から零れ落ちる光が眩しすぎる。 身体が壊れる。 世界が崩れ落ちる。 「やぁっ!やぁっ!やぁっ!」 悲鳴を上げてまた痙攣する身体を、弱った捕食動物相手に遊ぶかのように嬉々として弄るゾロ。 何がどうしてこうなったのか……。 サンジが分かるわけが無く、ただ泣いて啼いて助けを請い、聞き入れてもらえず泣き快楽に身を浸ける。 そんな時間がどのくらい過ぎたか。 もう出ないと訴えた時、ゾロは静かに震えるサンジを見下ろし宣告した。 「なら、出さなきゃイイだろう」 冷たい黄金の瞳には、涙に濡れ疲れ果てたサンジの表情を移しながら感情はなく、その後も容赦なく大人になりきれていないサンジの身体を弄り続けた。 しかしである。 ゾロはサンジの身体を弄り意識も身体もトロトロに解かしているのに、自分の欲望に満ちた勃起の一物をサンジの中に入れようとはしない。 互いの物を擦り合わせ、サンジの小さな口に押し入れて奉仕させる事はするが、指で広げた蕾の中には決してそれを入れようとはしない。 サンジも子供ではない。 男同士の行為は話で聞いている。 ならば、この後の展開も見えているのだが、予想外にゾロはサンジの中に入ってこないのだ。 「……ゾロ!」 身体の奥の奥が疼き、もっともっとと欲が身体を乗っ取る感覚に、サンジはどうしようもない切なさを感じた。 疲労と快楽に全身を持っていかれそうなサンジは、悲鳴の混じった甘い声でプライドを捨てて叫ぶ。 「もう、……入れろっ!!」 その言葉を吐き出したときのゾロの顔は、苦しさと切なさと、色々混在した表情を浮かべた。 まるで今にも泣き出しそうな……。 「……サンジ」 ゾロが行為の最中、後にも先にもその名前を呼んだのはこれだけだ。 後はひたすら無言でサンジを愛撫し、好きなように弄くり続ける。 サンジも何時しか諦めて、全ての力を抜き去りゾロに身を任せた。 どうせ喰われるならゾロが良い。 ゾロと一生一緒に居られないのなら、せめてゾロの肉となり血となり共に居たいと思うから。 思い切って一思いに食べられたほうが楽かもしれない。 でも、一秒でも一緒に居たいと思うのだから、この鬼畜めいた行為が何時しか幸せに感じている。 ゾロの心の中は分からない。 この行為の意味も口に出さないから何も分からない。 溢れる涙を抑えることはできないが、ただ、今は幸せだとそう感じた。 「……い………」 「………おい、……」 「……コック、……」 「こんな所で寝ているなら、部屋に戻って寝ろ。グル眉!」 「誰がグル眉だ、アホ筋肉マリモ馬鹿!!」 条件反射で机の上にうつ伏していたサンジは、ガバリと音を立てて起き上がり定番の言葉を口にしていた。 しかし、起き抜けの頭では、そこまでが精一杯であって、現在の状況が何一つ掴めない。 キョロキョロと不審な行動を繰り返し、やっと自分の置かれている状況に気付いたのは、ゾロの声に反応して暫くたってからだった。 「……こんな所で何してやがる」 僅かに声が掠れているが、それは寝起きと言う事にしておこうと勝手に結論付けたサンジは、サニー号内に作られた作業室でもある倉庫内に設置された机上に頭を乗せて寝ていたようだ。 気候のせいか、1ヶ月前に買った野菜が傷んでいたため、切り取り早急に使うものと保存するものに分けている最中だった筈。 そんな孤独な作業場に、調理とは全く縁のないゾロが何故いるのだろう? サンジは小さく唇を開けた無防備な表情で、鋭い目の剣士を見た。 「いま、不寝番を交代したから、酒を貰おうと思ってここに着た」 「勝手に持って行けば良いだろう!」 「勝手に持って行って怒る奴は、何処のどのアホコックだっ!」 「アホ言うなっ、クソ剣士!!」 ムッと両者睨み合い、暫しの沈黙が流れる。 が、先に折れたのはサンジだ。 「冷蔵庫の中に入っているヤツ2本なら飲んでいい。ツマミもいるのか?」 「ツマミはさっき貰った握りで十分だ。……貸せ」 「……何を?」 「冷蔵庫の鍵だ」 呆れ顔のゾロは、まだ寝ぼけて嫌がるのか?と小さな声で呟く。 船大工が用意してくれた冷蔵庫は頑丈で、鍵1つで在庫の調整を安心して行う事ができる。 勿論、化け物集団の麦藁のメンバーに、たかだか鍵1つの冷蔵庫など無意味なのだが、そこは航海士と言う最強のストッパーがゴム人間の行動を事前に牽制してくれていた。 サンジは肌身離さず鍵を持ち歩く。 だからゾロは、その鍵を貰いにここまで着たのかとサンジは1人納得した。 ズボンのポケットに入れた鍵を取ろうと手を入れた時点でサンジは固まった。 ギクリと表情を強張らせて顔面が蒼白になる。 うたた寝の最中に人には言えないような夢でも見たのか? 19にもなって何が悲しくて夢精をしてしまった。 股間が濡れてズボンも湿り気を帯びている。 室内に精液臭さがあるかもしれない。 ゾロはもしかしたら気付いているかもしれない。 と思うと、カッと顔が赤らんだ気がする。 サンジのもたつく行動に痺れを切らしたのか、ゾロの無骨な手がスッとサンジの方へと伸ばされる。 驚きその手を払おうとしたが、片手はズボンのポケットの中に、もう片手にはうたた寝前に使用していた包丁が握られたままで、このままゾロへと手を伸ばせば無用な傷を作ってしまう。 僅かに俯きギュッと目を瞑ったサンジの顔に、ゾロのかさついた大きな掌が添えられた。 驚き仰ぎ見れば、グッとサンジの頬を乱暴に拭うゾロの顔。 普段はむさ苦しい表情ばかり見せる剣士が、僅かに赤みが差した頬をしている。 「……涙で顔がグチャグチャだぞ。涎は自分で拭っとけ」 「………なっ!」 ポカンとその行動を見詰めたサンジに、小さな舌打ちをしたゾロは、眉根を顰めてもう片方の頬に残る涙を乱暴に拭う。 その仕草は、乱暴に見えて実は優しい。 繊細なガラス細工を大事に触るような指先に、サンジの頬が赤く染まる。 その表情を見た剣士は、一瞬眉根を寄せ添えていた手をサンジから離し、僅かに下へとさげた。 子供が残念がる。そんな表情を浮かべたサンジは、素直に口元の涎の痕を腕で拭い、続けてまだ潤んで視界を妨げているモノを袖で拭った。 その行動を確認したゾロの視線がフト柔らかになったとたん、サンジの頭を大きな手が撫でる。 「嫌な夢でもみたのか?子供みてぇだな。汗流しに風呂行って来い、俺はキッチンで待っているからな」 そう言って、ゾロはサッサと作業部屋から出て行ってしまった。 ゾロは、サンジの状態を分かっていて風呂に行けと言ってくれたのか? 兎に角、濡れた股間のままキッチンへ行かなかった事は助かったが、先程のゾロの行動が分からない。 優しい目の理由が分からない。 後に残されたサンジは、撫でられた頭を両手で押さえ、事の成り行きについて行けず無防備な瞳を締まった扉に向けていた。 「お…俺はガキじゃねーぞ!クソ剣士!!」 かなり遅れて口から出した罵声は、意味も無い照れ隠しだった。 『もしも……願いが1つだけ叶うなら』 作業部屋を出ようとしたサンジに、またあの声が聞こえてくた。 振り向いたサンジには、別段変わった様子が無い部屋が広がっている。 気のせいかと首を傾げたサンジは、風呂に入りに行く為その場を後にした。 『猫』を養いて自ら患いを遺す 海賊 編 第1章 up 2007 09
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