Principal 外伝 |
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Principal(プリンシバル) A lateral biography 〜 Carry all on its
back 今日の稼ぎは、二人合わせても六八〇〇センズだった。 未成年の子供2人では、これだけ稼げれば良しとするしかないのだろう。だけど、これでは到底足りない……。 だから、エドワードは、弟アルフォンスの靴だけを購入した。長い間履いて居たそれは、靴底がかなり擦り切れ状態が良いとは決して言えない。雪が降り始めたこの頃では、沁みてさぞ冷たいだろう。 深夜近いコインランドリーは人影も無く、幼い兄弟2人が一つの毛布に包まり、今まで自分達の着ていた服を手で洗い乾燥機に入れている。外の吹雪く景色を見ながら今晩の夕食を2人で分け合った。 アルフォンスの靴を購入した事で残金は少なく、手に入れる事が出来た食料は僅か。成長期の子供では、一人で食べても足りないくらいの量をゆっくり噛み締めながら食した。 出来るだけ弟に多く食べてもらう様考えながら………。 母親は2年前に他界した。 父親は何時の頃か覚えてはいないが、アルフォンスが物心付く頃にはその姿は無かった。 突然現れた大人に有無を言わさず連れて来られたそこでは、自分達は『モノ』扱いだった。特に、バレエの才能が溢れたエドワードに対しては、金の成る木以外には見えなかった大人達に好きな様扱われた。 その為、エドワードは左足つま先を疲労骨折し、二度とバレーシューズは履けない身体と成ってる。右腕にいたっては、蚯蚓腫れの様な酷い傷跡が今でも残っていた。 暫らく安静を言い渡されたエドワードに見きりを付けた大人達は、アルフォンスに目を付けた。 ――― だから ………逃げた。 逃げて、逃げて、逃げ抜いて、追手の届かないここで暮らし始めた。と言っても、未成年に、それも身分を証明する事が出来ない自分達に部屋を貸してくれるほど甘い世の中ではない。 熱い夏の日は公園の物陰で、そして今は………。 「アル、洋服乾いたぞ!」 「うん!」 「これ着たら帰ろう。」 「わぁ〜!!乾燥したばかりだから洋服アッツイね!!」 「身体が暖まるな。」 乾燥し終えたばかりの洋服を直ぐさま着込み、すす汚れた薄いコートを羽織る。出来ればもっと温かいコートをアルフォンスに買ってあげたいとエドワードは思っているが、何せ金が無い。 ――― どうすれば金って稼げるんだ? エドワードはそんな事を考えながら、余熱が篭ったランドリーを二人後にした。 吹雪くこんな日は、道路が一面の雪に覆われている。購入したばかりのアルフォンスの靴は、その雪をサクサクと踏みしめ少しずつ泥に汚れ始めている。 「足、冷たく無いか?」 「うん、全然沁みないよ!!」 「………良かった。」 弟が安心するような優しい笑顔を向けたエドワードは、正面を向き厳しい天候の中目的地へと歩む。 自分が履いている靴は、大きな穴が数ヶ所空いている為、雪が靴の中まで入り込み指先の感覚を奪って行く。疲労骨折した場所は、ズキズキと痛み涙が零れそうに成る。 しかし、今エドワード自身に使う金は無い。成長が早いアルフォンスに服を買ってあげなければ成らないし、食料も豊富ではない。読みたがっていた本も買ってあげたいし……。兎に角、自分が我慢をすればそれで良いとエドワードは考えている。 ――― 俺が全部遣るから、お前は何も心配するな! それがエドワードの口癖に成っていた。 今は廃墟と化したビルに忍び込み、暖の無い部屋隅で2人の熱を分け合うよう傍に寄り一つの毛布に包まる。 二人が『ロイ=マスタング』と出会うまでエドワードの戦いは続いて行く。 エドワード=エルリック 一二歳。 アルフォンス=エルリック 一一歳。 ある冬の出来事……………。 The end of a lateral
biography (up 3,July,2005) |