プチっと鋼のFan‐Club

 

 

 

 

 

 

 温かい陽射しの中、同じ光りで出来ているのかと見紛うばかりの金の髪を揺らし、突如エドワード=エルリックは司令室に飛び込んで来た。

 

「よお!大佐達元気してる?」

 

 大人達相手に軽い挨拶を済ます相変わらずのエドワードに、皆笑いを禁じ得ない。そんな大人達に目もくれず、エドワードは新聞に目を通していたロイの元へと歩み寄った。

 

「相変わらず『サボリ』してんだ。」

 

 にこやかに微笑むエドワードを見るロイは、久し振りに顔を見えた恋人からの痛烈な嫌味に渋い顔を向け声を発した。

 

「もう少し大人しく入室して来れないのか?」

「今更じゃん!それより、少し時間くれない?」

「何だ?」

 

 そう言ってエドワードは袋からカメラを取り出した。

 

「今回の旅でちょっと写真を撮らなきゃいけない事があってさっ、で、カメラをレンタルしたんだ。だけど、フィルム余っちゃって……大総統にも送りたいから一緒に撮ろう!」

 

 エドワードの脈絡のない話しにロイは着いて行けず首を傾げる。

 

「エド、カメラをレンタルしてフィルムが余ったと言う事は解かるが、何故『大総統』の名前が出てくるんだ?」

 

 その質問にエドワードは、ポケットから一枚の半紙を取り出しロイに差し出した。

 

「何だかよくワカンネーけど、大総統から手紙が来て『近日撮った写真を一枚郵送する事』って書いてあるんだ。だからさっ!一人より皆で撮った方が良いじゃん!!

 

 ロイはこめかみに指を当て自分の分身が告げる嫌な予感に頭を悩ませた。しかし、当のエドワードはその気満万でロイの忠告など決して耳に入れないだろう。

 

「ありがとうエド。しかし、私は写真に撮られるのが苦手なんだ。」

 

 やんわりと鋭意を削ぐ台詞でエドワードを嗜めるロイ。ロイの言葉にエドワードは、少し寂しそうな表情を浮かべ「そうか……」と小さく呟いた。

 しかし、エドワードはまだ諦めきれないのか、持っていたカメラのファインダーを覗き何やらカメラをいじっている。そして、「こんなモンかな?」と独り言を呟くとロイの左側に回り込み、いきなり肩を引き寄せロイの頬にエドワード自身の頬をくっ付けた。驚いたロイは、身体を離そうとしたが、すぐさまエドワードに

 

「くっ付かないとフレームの外に出る!」

 

と、窘められる。そして、エドワードは機械鎧の腕をいっぱいに伸ばし、カメラを構えるとシャッターを押した。

 

「よし!撮ったぜっ!!ピントが合っているかワカラネーけど、上手く写っていたら大佐にも送るからな!」

 

 呆気に取られるロイは、エドワードの言葉に反応する。

 

「『大佐にも』とは、他に……」

「大総統に送るんだよ!じゃあ、俺現像してもらいに行って来る!」

 

 そう言って、エドワードは嵐のように部屋を出て行ってしまった。

 

 

 

 エドワードは、自分の取った行動が余程恥ずかしかったのか、写真の現像が済むとそのまま旅に出発してしまった。そして、数日後、ロイの元には郵送であの時の写真が送られて来た。

 それは、年相応の愛らしい笑顔が写るエドワードと、驚きつつも冷静なロイの親密さが溢れる写真だった。勿論、その写真がロイの自宅の寝室に飾られた事は言うまでも無い。

 

 

 そして、その写真は数ヶ月後、ハボックの元に『鋼Fan会報表紙』として再び姿を現す事となった。

 

 

End

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ……

 

会報が届いたその日、煙草を咥えたハボックがボソリと

 

「大将……とうとう自分の身を売ったか!?

 

と、呟き、首を長くして待っている上官に何と言って渡そうか悩む事となった。