Straying to an exit

 

 

 

 

 

 

 

 

終わりじゃない。

本当のgameはこれからなのかもしれない。

 

 

何せ相手は―――

 

 

 

 

あの『鋼の』だから……。

 

 

 

 

 

 

Epilogue

... in a point of an exit

 

 

 

 

「どう言うつもりだ、エドワード!」

「ここは軍施設だっ!『エルリック大佐』または『エルリック』って呼べ。なんなら『鋼の』でも良い。」

「この際どうでも良い。私が聞きたいのは―――」

「はいはいはい。俺、仕事中!サボリ魔連れて帰ってくれない?少佐。」

 

エドワード君……エルリック大佐が入隊して二年。

その聡明な上司は、直ぐに環境と仕事を覚え、今では一部所を率い名実ともに大佐の地位を確立している。中将の下で働く事は変わらないけれど、将軍の持つセクションの一つをTopで受け持つ彼女は、今や欠かせない人物として私達の傍にいた。

 

あの日、この二人の未来は決まったモノだと誰もが思っていた。勿論、将軍とてそのつもりだっただろう。

 

 

一緒に暮らし籍を入れそして支え合う。

 

 

しかし現実は違かった。

エドワード君は同棲する事も籍を入れることも、更に婚約する事すら拒み今に至る。その経緯は二人しか判らない事。当事者同士の話なので、私達が何か言える立場ではない。

それでも『あの』将軍がそれを許しているのだから、と私達は傍観者に留まっていた。

 

しかし、事態は変わった。

今年の人事移動で、エドワード君……エルリック大佐は、『東方司令部司令官』に任命され、このセントラルを離れるという。

 

中将は出勤してから自室には入らず、エルリック大佐に宛がわれている執務室に入り仕事をするエドワード君の机の横に椅子を引いて来て座りこの状態。

将軍とて仕事が無い訳では無い。むしろ鬼のように溜め込んでいる。……そして20分後には会議。

忍耐にも限界があった。

 

「将軍、会議のお時間が―――」

「待たせておけ。私が行かなければどの道会議は始まらない。」

「しかし……」

「少佐を困らすなよ!さっさと行け!!」

 

書類から一切視線を上げず、処理をするエドワード君。その真面目さの少しでもこの将軍にあればと小さな溜め息を付いた。

 

「それとも?将軍になれば暇なのか、少佐??」

「いいえ。」

「ならさっさと行けよ!」

 

やっと書類から目を上げ将軍を睨む。横に座っている将軍も、目線を逸らさず真っ向からそれを受けとめる。

 

 

――― 戦場と変わらない。

 

 

私は二人の表情からそう感じた。

 

「何故東方司令部行きの赴任希望を提出した。理由を聞いている、答えなさい。」

「それは『上官命令』?それとも『個人』の理由?」

「どちらとて私にとっては同じだ。」

 

エドワード君は呆れ顔で上官を見ると、小さく笑って視線を書類に移した。

 

「俺、軍人なんだよ?」

 

その言葉に私も将軍も意味を掴みきれ無かった。

 

「どのくらい前かな?三週間ぐらい前か。大総統がこの部屋にイキナリ顔を出してさ『東方の治安が悪化し始めている。東方の情報に精通している人間を捜しているのだが?』と言われてアンタならどうする?将軍。」

 

そして再び視線を上官に戻すエドワード君。上官であり恋人でもあるのだろう将軍は、眉を寄せ目を細めエドワード君の言った事を飲み込んでいるのだろう。

 

「東方出身、旅をして隅々まで見て来た俺の所に来て、『君以上に東方を知っている人が居るのか?』って無言の圧力だよ。ハクロのオッチャンの下ってーのが気に要らないけど、行くしかないだろう?」

「エドワード。君は私の管轄下にある。何故勝手に届を出した。」

「『エルリック大佐』または『エルリック』!何回言えば判るんだ、この蛸オヤジ!?」

 

 

私や他のメンバーが『エルリック大佐』と呼んだ時、エドワード君ははにかみながら

 

「それってチョット……どーよ?俺って年下の『ぺーぺー』だし、第一そう皆に呼ばれると腰の辺りからザワザワーって来るんだよ。今まで通りじゃ駄目か?」

 

軍服に着られている感のあるエドワード君の意見を尊重し、私達は『エドワード君』もしくは『エド』と呼んでいた。

しかし、恋人である筈の将軍が施設内で『エドワード』と呼ぶと決まって

 

「『エルリック大佐』または『エルリック』って呼べよ!」

 

と怒っていた。

何故かは判らない。照れ隠しならそれまでなのだが、一度気に成りそれとなく会話を振った時、切なそうに潜めた眉で笑うエドワード君に交わされてしまった。

 

「だからさー、直接その場で書いたから報告も何も有ったもんじゃないんだよ。その上大総統に『この件は人事辞令が出るまで内密に!』って釘まで刺されたんだぜ。どーよ!!」

 

その時扉からノックが聞えた。

 

「どーぞ!」

 

エドワード君の通る声が室内に響く。失礼しますと女性の声が聞こえ、入室して来たのはロス大尉だった。

 

本来ならアームストロング将軍の下で働く彼女は、今やエドワード君の副官としての地位を確保している。

それは、エドワード君がなれない環境で過ごす負担を少しでも軽減しようとマスタング将軍が手配した人事だった。

 

「何かあった?」

「はい、先日報告したテロリスト集団及び元国家錬金術私の潜伏先と思われるアジト付近で立て篭もり事件発生。場所はセントラル劇場、人質は1,000名余り。内、女性と子供が開放され現在250名程。主に男性と劇場関係者です。」

「相手の要求は?」

「『マスタング将軍の身柄』と『現金1,000万センズ』、『逃走用車両』。以上です。」

 

エドワード君は席を立ち、近くに掛けてあったコートを手に取ると大尉の所へと歩き出す。

 

「しっかし、チョット欲張り過ぎない?将軍の身柄はどーでも良いけど、1,000万センズの血税って。」

 

そして今だ椅子に座り機嫌の悪い表情をエドワード君に向ける将軍に全ての視線が注がれる。

将軍は背凭れに身体を預け、前髪を掻き上げながら言葉を放つ。

 

「私はこれから会議だ、付き合っていられん。」

「今まで仕事しなかったのは何処のどいつだ?給料泥棒。」

 

その言葉を聞いた将軍は机に肘を付き、頬を手の甲に乗せ不適な笑いをエドワード君に見せて

 

「それとも私が着いて行かなければ『寂しい』か?」

 

と挑発していた。

苦虫を潰したような表情を見せたエドワード君は、ロス大尉の方へと視線を向けると将軍に聞えるかどうかの小さな声で

 

「アンタが居ると邪魔。今日は雨なんだよ……無能。」

 

と囁いた。

そのまま部屋を出ようとするエドワード君の背中に、将軍の声が掛かる。

 

「エドワード、20時だ。話は終わっていない、20時に私の部屋へ来なさい。」

 

無茶苦茶な話である。今の時間は昼前ではあるが、立て篭もり事件を12時間以内で処理するなどと。ましてや相手は、第一級警戒を如いていたテロリスト集団と元国家錬金術師。幾ら私的の重要問題とは言えそれは無いと思った。

 

エドワード君を見れば、背中越しでその表情は見えない。しかしロス大尉の表情から見るにそれは予想できた。

振り向き将軍にその表情を見せたエドワード君の瞳には、意思の強い確信めいた色がある。

 

20時だな。アンタもサボらず仕事終わらせろよ!」

「エドワードこそ遅れるな。」

 

ニヤリと笑う大人の表情。その存在感は、小柄なエドワード君からは想像がつかない程の力があった。

 

「格の違いを見せてやるよ。」

 

 

風を切るように軍のコートを翻し部屋を出て行くエドワード君達を、将軍は隙の無い目線で送り出した。

 

 

 

 

 

 

――― 良く知る二人が幸せであって欲しい。

 

私の考える幸せが、二人の幸せとは限らないけれど、世間で言う所の幸せを掴んで欲しいと心から祈らずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時計の針は20時を指そうとしていた。

 

扉の向こう側では、足音と共に二人の声が聞えて来る。

一人はロスの声。もう一人はエドワードの声だ。

 

足音は扉の前で止まり、話し声だけが私の部屋へと響いてくる。暫らくするとノックと共に扉が開かれ、金の髪を靡かせエドワードが部屋へと入って来た。

肩に軍服の上着を掛けた状態で入室して来たエドワードを、目を細め怪訝に見詰めれば居場所を捜すように視線を泳がせる金の瞳を見ることが出来た。

 

「また無茶をしたのか?」

 

椅子に座り低めの声を発しれば、少し怒った顔のエドワードが来客用ソファーにドカリと身を投げ右肩口を左手で押える。

 

「無茶しなきゃ遅刻だろう?第一、人質・軍関係者、それに犯人側含め死亡者ゼロ。負傷者4名。結果オーライでOKって事だ。」

「司令官自ら怪我をするのは如何かな。」

「何せ上司が立場忘れて檻破って飛び出して、ハチャメチャやる奴だから似たんだろう?」

 

こうして病院へ行かないと言う事は、怪我自体たいした事ではないらしい。しかし、元の身体に戻って、唯一傷が無かったそこに新たなそれが出来た事に腹の中で黒い感情が湧きあがって来る。

私の机から横向きなソファーに腰掛け視線を一向に向けないエドワードへ声を掛けるが、瞳は真っ直ぐ壁へと向けている。その行動が腹立たしく、紙とペンを持つと席を立ちエドワードが座るソファー横へと足を運んだ。

 

「私は君と話をする為にここへ呼んだ。何の話かは解かっている筈だ。今すぐ『除隊届け』を書け。」

 

先程手にしたそれを、エドワードの膝へ投げ落とす。

それを視界の横で確認したエドワードは、置かれた紙とペンを目の前の机上へと投げ置いた。

 

「悪いけど軍を辞めるつもりは無い。」

「いい加減その減らず口を塞いでしまいたいな。」

 

ゆっくり視線を寄越すエドワードは、真っ直ぐなまでに私を見詰める。

 

 

変わらない瞳。

 

焔の意志。

 

 

未だあの時の約束の為、その身を私の傍へと置くその気持ちは嬉しくもあった。

 

「確かに私は『約束』を果たしてはいない。しかし、君を手放すつもりも無い。」

 

 

 

――― 私とエドワードの『約束』

 

 

 

それは、あの『game』が終了した後交わされたものだ。

あの時、そのまま自宅へと招き入れたエドワードと今後について私が話をし始めた。

入隊届けを出した事により軍は正式にエドワードを女性として入隊さる事。その所属も紆余曲折あった事。

 

 

今後、私の下で働く事。

 

そして、今後中央で暮らすにあたりその拠点を我が家に置く事。

 

 

しかし、エドワードは軍に関する事は一切文句を言わなかったが、『同棲』する事に関しては頑なにそれを拒んだ。

 

リビングの窓辺に寄り添い少し疲れた表情を見せるエドワード。揺るぎの無い真っ直ぐな瞳は今も健在で、その意志の強さを私に見せ付けた。

 

「俺は勝負に負けたからこんな事を言う権利は無いのは良く解かっている。でも、このままじゃ……俺はアンタに借りが多すぎて、素直に将軍の所へ行けない。」

 

珈琲を運んで来た私に前触れも無くその言葉を言ったエドワード。暫らくその意図を汲もうとその瞳を逸らさず見詰めた。

 

「錬金術の基本は『等価交換』……じゃないけど、俺はこのままアンタと暮らしても心に後ろめたさがある。借りっぱなしの自分が悔しくて……素直になれない。だから、アンタの『野望』が成就するまで俺を今まで通りに『軍の狗』として扱ってくれないか?」

 

私はその言葉を受諾した。

無論、条件も付けた。だが基本的に私との関係を公にしない事がエドワードの希望だった為、不服はあったがそれを飲んだ。飲まざるを得なかった。

 

仮にこのまま私の希望を押し付けたとしても、決して私達は望む理想系には近付け無いだろう事は解かる。下手をすれば捕まえた小鳥は、籠の中で苦しみの余り自らの生を止めてしまうだろう。

 

 

珈琲をテーブルに置くと、細い左腕を掴み強引に立たせる。

細い腰を掴みその右肩を気にしつつ私はエドワードを抱き寄せた。

 

「――― ッ!!」

 

刹那、エドワードの顔が微かだが苦痛に歪む。右肩以外に負傷したのか、私は軍服の下に着ているタンクトップの裾をズボンから引き抜き、エドワードの木目細やかな身体へ直に触れた。

しかし、その感触は私の考え通り包帯に巻かれたエドワードの身体。

 

表情を覗き込む私から目線を逸らし、罰の悪そうな顔をする。それは私がこれから言わんとする事を理解しているようだ。

 

「君は……命が幾つあっても足りないな。」

「今まで一つで事足りたんだ、これからもこれで十分!」

「やはり、東方にはハクロに残ってもらうか。」

「えっ?」

 

ニヤリと口角を上げた私の表情と言葉を理解しがたい顔で返すエドワード。

こんな表情は、まだ幼かった時そのままの警戒の無い無防備な瞳を向けてくる。

 

「君が向こうで要らぬ上官の『オコモリ』をしない様、ハクロには中央へ来てもらうつもりで動いていたが……ジジー相手に不味い茶でも飲んでいた方が君の為かな?」

「ハクロのジジーを中央へ?」

「あぁ、代わりに君と話が合いそうな将軍を送るつもりだったのだが……。まあ彼にして見れば、まるで天下を取ったかの如くおお腕を振って中央に乗り込んでくるだろう。ヤレヤレだ。」

 

覗き込む金の瞳から業と目線を逸らし、何処か遠くを見詰めた振りをする私に、エドワードは視線を合わせ様とその両手で私の両頬を包み強引に顔を自分へと向けさせる。

 

「俺が悪かった!今後は怪我しないから……しないよう努力する……するつもり……覚えていたら……」

 

この場に及んでこの不確実さは笑ってしまう。しかし、冷静にその瞳を射貫けば、エドワードは包んでいた両手を離し俯いてその表情を隠してしまった。

 

額にKissを贈る。

瞼に…頬に…鼻先に…そしてもう一度祈るように額へ……

 

「有り難う……ってお礼言うべきなんだよな?」

「何をだね?」

「俺の『東方行き』認めてくれるんだ。俺の我が侭をまた許してくれるんだ。」

 

緩やかな眼差しは私の瞳を逸らさず見詰める。

フッと笑いながら私はエドワードの腰を更に抱き込み耳元で甘く囁いた。

 

「私が反対しても君は『檻を蹴破って』『鎖を断ち切って』飛び出すだろう?」

「………俺ってキメラ?」

「だから私の目の届く範囲で活躍してくれ。」

「何か……納得出来ねー言われ方。」

「無茶をするな。」

「……解かってるよ。」

「エドワード――― 」

 

耳元から唇を離し、再度その瞳を覗く。

 

「三年だ、三年で私はこの国のTopに立つ。その時迎えに行くから『白いドレス』を着て待っていなさい。」

 

『白いドレス』の意味が解かったのか、エドワードは頬を赤く染め、眉を潜めながら悪態をついた。

 

「三年じゃ短いんじゃないの?」

「お釣が来るさ。」

 

私の表情を確認すると、エドワードは瞼を伏せフワリと笑って見せた。

小さな顎を優しく掴み私にその顔を向けさせれば、抵抗せずKissを受け入れる。

 

 

三年は長い。

一瞬でも傍から離したくは無い。

しかし、私の小鳥は自分の力で飛ぶ事を知っている。

 

飼い殺すつもりは無い。

生命力溢れる光りを吸収し、また私の傍に帰って来れば良い。

 

エドワード……私の『道標』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東方に暮らし始めて随分日が経つ。

 

赴任してから何年経ったのか?

 

それとも何日か?

 

もしかして何時間?

 

余りにも多忙な為時間の感覚すら解からなくなっていた。

 

馴染みのあるこの建物には、馴染み深い面子は居ない。勿論弟アルフォンスも中央で勉学に励んでいる為、余程の長期休暇が無ければこの街に訪ねて来る事も無かった。

 

この街に来て新しく出来た部下や友達も居る。中央から引き続き俺を支えてくれる人もいる。

だけど、孤独だった。汽車に飛び乗り数時間すれば逢う事の出きる懐かしい面々。そして……。

しかし、その時間も心の余裕も無かった。

 

今まで俺は、皆に『保護』されて居たんだと気付いた。

中央では当たり前の用に感じて居た軍の空気は、ロイ=マスタングの傍に居た事や、そこで働くメンバー達が俺に気を使い、出来るだけ要らない騒音を隔ててくれたに過ぎなかったんだとこの街に来て身体で知る事となった。

 

「暇だと……碌な事考えねーな。」

「どうかしたんですか?」

 

昔、アイツが使っていた部屋で…変わらない机と椅子で、俺はロス大尉が煎れてくれた珈琲を口にした。

窓から外を眺めればアイツが嫌う雨。

 

――― 中央も雨だろうか?

 

そんな事をフト考えてしまう。

 

俺の書いた書類をチェックする大尉。その光景が、あの頃大佐だったアイツとホークアイ中尉にダブって見えた。

 

「大佐、先程新しい大総統が正式発表されました。」

「そう、変更無し?」

「はい。二日後、一○○○(ヒトマルマルマル)に着任式を執り行うそうです。」

「ここの代表は将軍で良いの?」

「召喚状にはその様に。」

 

珈琲カップに残る珈琲を見詰め、俺は目的を達したアイツの顔を思い浮かべた。

 

「『お釣が来る』か……」

「何がですか?」

 

俺の言った言葉に不思議そうな顔をする大尉。俺は大尉に目線を動かし笑ってみせた。

 

「俺がここに着任する前に将軍……あぁ、新大総統閣下が言ったんだ。『三年後にtopに立つ』って。俺、『三年じゃ短いんじゃないの?』って皮肉ったら『お釣が来る』って言いきったんだ。普段無能なのに有言実行したんだなーって。」

「……三年でTopですか。実質二年七ヶ月でしょうか?」

「そんな所。」

 

それから暫らく間が開いた後、大尉は俺に帰宅を促した。

 

「ここ何日か忙しく家に帰って休む時間が無かったでしょう。仕事も目どが付いたので一度帰宅してお休み下さい。」

「えっ?だってそれは皆同じじゃん。俺ばっかりはマズイよ。」

「私達も交代で休暇を頂きますよ。まず長が休んで頂かないと私達も後ろめたいんです。」

 

俺は眉を潜めその表情を覗う。だけど何時もと変わらない優しい笑顔は、俺の身体を気遣ってくれているようで、素直にその言葉を受け俺は手配してくれた車に乗り込み自宅へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

家の前には何故かピンクのドレスを着たウィンリーが!?その横には黒のタキシードを着るアルフォンス。

俺は車から降り雨に濡れる事も厭わず真っ直ぐ二人の前へと進んだ。

 

「お前達こんな所で何しているんだよっ!アル学校はどうした?ウィンリー、その服…何処かに行って来たのか?」

 

俺の顔が可笑しかったのか、二人は顔を合わせるとクスクス笑い始めた。

そして、ウィンリーが後ろに隠していた白い何かを頭に乗せる。

 

「これ何だよ!」

「兄さんこれ持って!」

「はぁ?これって……花束?て何なんだよっ!」

 

俺の言う事を無視し、ウィンリーは俺の自宅の扉を勢い良く開けた。

 

――― 確か……一昨日に家から出る時鍵掛けたよなぁ〜。

 

そんな俺の考えなど何処か置いて行かれ、アルフォンスが俺の右手を自分の左腕へと引き寄せる。

 

「行くよ!」

「どこへ?」

 

開いた扉の前には真っ赤な絨毯が続く。

俺の家の玄関は改造され続く絨毯の両側に中央で働いているはずの懐かしいメンバーが居た。

その先に神父らしき人と、今頃二日後に行なわれる着任式の為に忙しい筈のアイツ。

その身を包む蒼の制服は、この国で唯一人しか着る事の出来ない大総統の正装。髪を後ろに撫で付けたその雰囲気は、見慣れない姿だけに少しばかり緊張感が身体に走った。

 

呆気にとられアルフォンスに連れられ歩く俺に、アイツは自信有り気な笑顔で俺を迎え入れた。

 

アルフォンスがアイツの横に立ち、俺の右手を掴むとその手をアイツへと引き渡した。

 

「お願いしますね。もし……兄さんを泣かせたらたとえ大総統でも容赦しませんよ。」

「確かに、受け賜った。」

 

まだ呆然とする俺の顔を見る二人。その意図がやっと解かった俺は、恥ずかしさと怒りで大声を出した。

 

「何考えてる!アンタ達二日後に迫った式で大忙しだろう!?」

「そんなモノ形式だ、前と同じで十分だろう。それより約束を忘れていたようだね。」

「何の事だ!?」

「私は言っただろう、『白いドレス』を着て待っているように。と。」

 

全身を滑る様に確認したアイツは、困った表情で笑った。

 

「軍服にベールとは些か不服だが、私の欲しいのは『ドレスを着たエドワード』では無いから許してあげよう。」

「…………」

 

絶句。

 

その言葉が今の俺に当てはまった。

 

後ろの扉からは何人かの人がこの家へと入って来た。振り返り確認すれば、東方で俺と仕事をする大尉達。

俺はもう一度アルと新大総統の顔を見て一言言い放った。

 

「卑怯だぞっ!俺だけ知らされてなかったのかっ!」

「あの日、gameの勝者は私だよ。君には選択権などはなっから無い。」

「アルッ!」

「いい加減落ち付いてよね!僕だって面倒見切れないから。」

 

 

天を仰ぐ事しか出来ない俺を、参列した皆は笑ってその様子を見詰めていた。

 

 

「あぁ〜、負けたよ……完敗!」

 

 

 

gameはこれで終わり?

 

これから始まる?

 

 

これからもこんな風に過ごして行くだろう時間。

 

 

「約束を果たすよ。」

 

 

それは俺達が望んだ未来。

 

 

 

Concluded

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■