報告書シリーズ 第1章

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はボロボロに疲れていた。そして、メチャメチャ眠かった。

 

 

 

 

 

結局復興に手間取り、3週間あの村に居た。

汽車に乗り込む前に軍へ連絡した為か、汽車で爆睡していた俺を軍の誰とアルが知らない部屋に運び込んで。

 

 

 

 

で、ここは何処ですか?

 

 

 

 

 

……見た事が有る雰囲気の部屋は誰かの寝室らしく、物が整然と置かれ落ち着いている。

 

……大佐の家??

 

で、俺が3週間着続けた服はぬがされ、ダボダボのパジャマの上着だけを着されている。

 

 

 

 

大佐のパジャマ??

 

 

 

 

俺の服は何処だーーー!

 

 

 

 

 

気を取り直して服探そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リビングに行くと、俺の荷物の上に一枚のメモ用紙が置いてあった。

 

 

 

 

エドワード君へ 復興作業お疲れ様でした。

お腹が空いていたら、キッチンに簡単な食事を用意しておいたので食べて下さい。

それから、洋服はクリーニングに出しておきます。 大佐からの伝言です。『家に有る物は好きに使ってくれ』以上です。

from ホークアイ

 

 

 

 

『好きに使って良い』なら、そこに壁があったから『扉』を一つ作ってみました!ってのもアリなんだなぁ。

 

 ―――実際やったらブッ潰されるだろうけど……。

 

取り敢えず、風呂を借りたい。

後、珈琲飲みたいし中尉が用意してくれた飯も食いたい!

 

 『思った事は即、実行!』の俺は、適当な着替えを持って勝手知ったる大佐の家を風呂を借りる為移動した。

家主の了承もなく風呂を借り、珈琲を落とし、中尉の用意してくれたサンドイッチを食べた俺は、大佐が帰って来るまで時間があるからリビングの机を借りて今回の復興に関しての『報告書』を作成し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

どのくらい集中して居たんだろう?気付けば外は真っ暗だった。

そして、室内は明るい?? 何で?? 俺、電気つけた覚えないんだけど。

 

「鋼のは、集中すると周りが見えないのは相変わらずだな。」

「のわぁ〜!!―――何時からそこに居たんだ!?驚かすなよ!」

 

大佐は、何時に帰ってきたのか?風呂上りの一杯をしている最中だった。

 

「何度も声を掛けたんだが、まったく気付いてなかったみたいだな。」

「……悪りぃ。」

「それで、今書いているのは『報告書』だな。提出してくれるのか?」

「させるつもりだろ?」

「当然だ!」

 

−−−何が『当然だ!』だ!!

 

このヤローのふてぶてしさ。何とかして欲しい。

俺は、書いていた書類を掻き集めてファイルにしまい込みトランクに入れた。人に凝視されて書けるほど俺の精神は図太く無い。

 

冷めてしまった飲み掛けの珈琲を飲み、小さく溜め息を付いた。

 

 

 

 

気まずい空気が室内を占領し始める。

俺も、大佐も一言も話さない。

何て言うか……俺が喋ったら、即、『返事』の方向に行きそうでヤバい。

 

 

でも、気まずい雰囲気に耐えられず俺は無難な会話をし始めた。

 

「あっアルは?」

「アルフォンス君は、これだ。」

 

大佐は、遠くに有る何かを摘んで手前に置いて、また違う物摘んで遠くに置く仕草をした。

 

 

麻雀ですか……。

 

「…………。」

「…………。」

 

会話終了。

 

どーしろってんだ!!

 

「きょっ…今日は色々借りて悪かったな。……俺、宿舎借りに行かないと!」

 

そうだ!帰れば良いんだ。 俺って頭良い〜!!荷物を持って立ち上がった俺に、大佐は目だけで俺の行動を阻止しする。

『目からビーーーム!』って位強烈な視線だ。

 

「私は3週間待った。これ以上待つ気は無い。」

「………。」

 

当たり前だな…大佐から簡単に逃げられる訳が無く、だからって言って……俺って頭悪いかも。

 

ヲォォォーーーー!!!

 

とこ心の中で叫んで……取り合えず座ろう。

 

「約束を果たしてもらおう。」

「……。」

「エドの『気持ち』が聞きたい。」

「……気持ちぃ。」

「…『答え』が聞きたい。」

「……答えぇ。」

「……馬鹿にしてるのか?」

「……そう言う訳じゃ。」

 

あのねぇ…、いきなり気持ちとか答えとか言われてもズバッと言えるほど簡単な言葉じゃない。

気持ちは決まっている、答えも出した。

 

でも、言葉が決まらない。

大佐の『目からビーム』をかわしながら、『言語不自由人』になった俺は言葉を探しながらポツポツ話し始めた。

 

「俺、…復興中色々考えたんだ。」

「それで。」

「……大佐の事、真剣に考えた。……俺は大佐とどうなりたいんだ?って。俺は、やらなきゃ行けない事あるし、傍に居て大佐の力にもなってやれねーし。でも、……3週間離れていて、顔見たいと思った。……声、聞きたいと思った。」

 

これが俺の気持ち……。

 

「……俺、大佐の事……すっ……。」

 

何故止まる言葉!! どうして肝心な場所で止まる!!

 

 

 

「俺…俺…大佐の事………。」

 

 

 

―――限界!!

 

 

 

「俺。帰る!!

 

今度こそ荷物を持って速攻マッハで玄関に走り出した。

でも、俺の3歩は、出入り口側のソファーに座って居た大佐の1歩で『速攻拿捕』されて、さっき迄大佐が座って居たソファーに投げ付けられる様に座らされる。

 大佐の両腕が俺の身体を挟む様に伸ばされ、背凭れに手を付いた事で逃げ場を失った。

 

「逃がさない!!」

 

俺は両手を合わせ、逃げ場を作ろうとした。

 

「錬金術は無しだ。『大佐の事』の続きは何だ。」

「……勘弁してくれ。」

 

余りにも顔が近付いて来て、目を閉じ何とか気分を落着かせようと努力した。

 

「それが『答えか』?」

 

大佐の顔がかなり近く迄寄って来て、俺の言った事を確認した。

俺の答えを『勘弁』……NO! と勘違いした大佐。

 

「ちっ違う!俺は大佐の事す…ダカラ……。」

 

---『好き』だから。

 

っと言ったつもりだったけど、その言葉は小さく消え入りそうだった。

 

でも、大佐には聞こえたらしく……って、人が目を閉じてるのを良い事にキスするんじゃねーよ!

って舌入れてくんなぁーー!!

 

でもって、俺をソファーに押し倒すなーーーー!!!

 

空気吸いてー!酸欠で死ぬー!!

 

 

 

―――エドワード・エルリック。 享年15歳。 死因『キスによる窒息死!』

 

 

 

勘弁してくれ〜〜。

 

首を横に振って、大佐のキスから逃れるとやっと酸素を取り込む事ができた。でも、大佐の唇が俺の唇を……塞ぐんじゃねー!

角度変えるなぁーー!!大佐の背中をバンバンと叩き『ギブアップサイン』を送る。それに気付いたからか、大佐の唇が俺の首にキスをして来た。

って、これって??男女で『ヤル』あの行為だよなぁ…って事は、俺が『女』って事!!

 

「待て待て!! 俺は男だぞ!何する気だ!!

「何?エドを抱きたい!」

「だっ……!待てって言ってるじゃん!」

 

力の全てを使って大佐を押し退けると、大佐の『目からビーム』が俺を見詰めた。

 

「俺は男だって知ってるよな!」

「知っている。」

「んでもって、大佐も男だよな!」

「無論だ。」

「男って『抱かれる』んじゃなくて、『抱く』立場だよな!!」

「エドは私を抱きたいのか?」

 

俺が?大佐を?? 抱く???

 

………何だって????????

 

「エドは私を抱きたいのか?」

「何で!!そーなるんだ!!

 

ちょっと待った〜!!

何で大佐を抱くんだーーー、想像出来ねー!!!

 

「私はエドを『抱きたい』。肌に触れたい。1つになりたい。」

 

呪われてるぞこの口!大佐の口には何か別の生き物が!!

 

「エドが私を抱きたいなら抱けば良い。」

「想像も出来ません!!

 

勘弁してくれよー。何で大佐を抱く想像しなきゃならねーんだ!って人が悩んでるのに首にキスするなぁ!

 

「くすぐっ…てぇ…止め……ろ!」

「………。」

 

無視かーーーー!!!!

 

俺は全力で大佐を引っぺがした。

 

「大佐!勝負だ!!大佐が勝ったら好きにすれば良い。俺が勝ったら……。」

 

俺が勝ったら『大佐を抱く』?

 

……止めてくれ。

 

「判った。勝負しよう。で、何で勝負する?」

「……外で『馬の彫刻』をどちらが早く作れるか!」

「却下!!

 

だろーなーぁ…。

ゲーム系は駄目だ!俺はアルに勝った事が無い。大佐相手に勝てるとは思えない。

 

「……料理」

「駄目だ。」

「……背の低さ」

 

 

 

---自爆。

 

 

 

ズブズブと音を立てて燻る俺に、大佐は1つ提案をした。

 

「『ジャンケン』なら良いだろう?」

「ジャンケン??

「先に2勝した方が勝ちだ。」

「……判った。」

 

俺の上に乗って居た大佐は立ち上がり、俺はソファーに座り直した。

 

負けた方が良いのか?

勝った方が良いのか??

さっぱり判らなくなった俺は、大佐の「ジャンケン」の声に反射的に手を出していた。

 

―――大佐は『グー』。

……俺は『チョキ』。負けてるし。

 

大佐がニヤリと笑った。

くっそー!!勝負なんだから取り合えず勝つ!!!

 

「「ジャンケン…ポン」」

 

―――大佐…『チョキ』。

……俺『パー』。

 

……パーで負けたのってスゲー屈辱。って俺の負け!?

……て事は、俺『バックバージン』喪失の危機??

 

「約束だ。私がエドを抱く。」

 

俺はソファーにしゃがみ込んで大佐を見詰めた。

……逃げる気力は失せた。もうどうにでもなれ!!

 

「……ここで?」

 

せめて…ソファーは辞めよう!電気も消してくれ!!ついでに俺も消えて良いですか??大佐は、俺を抱き上げるとさっき俺が寝て居た部屋に連れて行った。

やっぱここが大佐の寝室?

俺をベットに降ろすと、俺の上に覆い被さる様に身体を横たえた大佐は、俺の顔をひたすら見詰めている。

 

穴が開きます、止めてくれー。

 

「愛してる。」

 

真剣な声は、俺を大佐が一番最初に導いてくれた声より熱っぽくて…あの時は、生きる気力も何もかも失っていて、『絶望』の中にいた。

俺はこの声にあの『暗闇』から抜け出る事が出来んだっけ。

 

……大好きな声。

……焔を生み出す指先。

……漆黒の瞳。

 

俺、これで良いんだ。って思考が固まる。

 

そして、また大佐に導かれて……俺の知らない世界に行く事になった。

END (Up 04.10.03)