報告書シリーズ 第1章

 

 

 

 

 

 

大佐と街に出てこれが3人目だっ!

 

普段軍服姿しか見た事ね〜から「私服持ってるんだ。」ってからかいながら目的のレストランに向かって歩いていた。が、それも長続きせず『綺麗な姉ちゃん』に声をかけられ長話。で、繰り返すこと3人目。

日頃の職務がバッチリってやつですか?

 

………俺の餓死もバッチリってやつですね。

 

大佐の『ご歓談』を邪魔しちゃ悪いからって気は更々無いけど、俺は少し離れた街灯に寄り掛かり話が終わるのを待つ事にした。

 

 

 

 

昼の1時を過ぎた時間の市街地は、買い物客や親子連れ、学生とかいろんな人が大勢歩いている。

 

イーストシティーは比較的治安がいい。俺達が旅で見て来た町には『ストリート・チルドレン』とかがうろついて………。喰うのにイッパイな奴らを見ている。

この街が綺麗なのは軍のお陰。なのだから、大佐は給料泥棒だけどそれなりに頑張っている証拠ってことで。

 

だからと言って、俺の空腹を我慢しなけりゃイケナイなんて法は無い。

このままじゃー俺の昼飯は『来年の今頃』になりそうだ。

 

……絶対『餓死』するだろう。間違いない!

 

 

 

しっかし何で大佐は『女』にモテるんだ?

性格悪いし。女癖も悪いらしいし………。

やっぱし『金と権力』。

 

後………『黒髪』?

 

旅先で誰かが言っていたよなぁ。

 

『髪は、男はBLACK。女はBLOND。』

 

それがカッコイイ(綺麗)条件!だって。

 

大佐は目も黒い。やっぱり『BLACK』かなぁ。

………俺の髪は『あいつ』に似て『LIGHTBLOND』。目の色も顔付きも性格も似ている………らしい。

アルの髪色は、『モカBLOND』。母さんによく似た優しい目をしている。性格も母さんにだ。

 

腹減っているせいかな?思考が『ネガティブ』になってきたよ。

こんな時、ラジオドラマとかならポケットに飴なんか入っていて………。現実は上手くは行かない!

実際ポケットに手を突っ込んでみたら………

 

あるじゃーん!!

 

今日の列車に同乗していた可愛い女の子から貰ったんだよ。

俺って隅に置けないじゃん。モテるじゃん!

アルと俺の分で2つ。お礼に錬金術で作った『紙のウサギ』をあげたっけ。

彼女の顔が天使に見えるよ〜。

 

早速、1粒口の中に放り込む。

………甘酸っぱいこの味は………イチゴ

 

………『ミルク』味。

 

俺………呪われているのか。

思わずしゃがみ込んだ足元には、季節ハズレの『タンポポ』が………。

この際贅沢は言わない、タンポポ食いてー。

飴をかみ砕き、もう一度大佐を見ると………

ワォー!

姉ちゃん5人に囲まれているよ〜。

 

一人の姉ちゃんなんか大佐の顔に手なんか添えて。

昼から『盛って』ますよ〜。

その空間だけ色付いちゃってるよ、ピンク色。

 

……な〜んか阿呆らしい。サンドイッチでも買って宿舎で食べよう。

そうと決まれば行け行けGO!GO! 俺。

 

一応大佐には言っておくか。………役職名で呼ぶなって言っていたけど今更な気もしてきた。

でも、一応立ち上がった俺を大佐は視界の隅で確認している今がチャーンス!!

 

「オラー!『全身黒男』。俺は帰るからな!じゃあなっ。」

 

俺は右手を上げ挨拶すると、全力で近くのパン屋目指して走り始めた。

 

子供は『意味もなく走る』って言われそうだか、今はパン屋に駆け込んで食料を調達したい。1秒だって無駄には出来ないぞ〜。

胃の中の合唱団が気を失う前に食べたい!

 

1番近くにあるパン屋はここから1ブロック先。走れば3分もかからない。

やっと昼食にありつけるかと思うと心も軽い!足取りも軽い!胃袋も軽い。

 

………口の中は『ミルク』味でへヴィーな状態だけど。

 

 

視界に『パン屋』の看板が見えた時、いきなり後ろから腕を掴まれた。

 

「………君は小さいくせに………足が早い。」

 

息も絶え絶えの大佐。

 

………今、俺地雷踏んだな!

 

「ぅだ〜れが『米粒並に小さい』だー!!!」

「………そこまで………誰も……言っていない。」

 

ゼーゼーと吐き出す息を整え話し掛けてきた大佐。

 

「大佐。息切れだね〜。『動悸』?それとも『お歳』?」

 

あっ。大佐地雷踏んだかな?眉間にシワが寄っているよ!

 

「鋼の。視察の話しを忘れたとは言わせない。どうゆうつもりか教えて貰おうか。」

 

大佐の声に怒りを感じるよー。でも、言いたい事はこっちにも有るからナッ!!

 

「大佐さあ〜。なんか勘違いしていないか?『視察』っても俺『命令書』貰ってないし。そもそも、俺を待たせ過ぎなんだよ!さっきの『親睦会』もそうだ。朝10時から待たされて頭にきているのはこっちなんだ!!」

 

俺は怒涛の様に喋り始めた。

喋り始めたら止まらない!頭の中でリズミカルなバックミュージックが流れている。

地面に目線を移しながら吐き捨てる様に怒鳴りまくった。

 

「外でたら全くもって前に進まずご歓談状態!ダ・イ・イ・チ、俺は大佐が大嫌いなんだ!何でそんな奴と飯食わなきゃいけないんだ。………俺の昼食は『サンドイッチ』に決定してるんだ!」

 

そこまで言って大佐の顔をみたら………。

静かな目で俺を見ていた。

……確かに俺、あんたが嫌いだよ。大人だし、いつでも余裕しているし。

俺の持っていない物イッパイ持っている。低い所であがいている俺はもっと嫌いなんだ。

 

「………ゴメン………」

 

大佐を見る事が出来なかった。俯いた顔を上げる事も出来ない。出来る事は謝ること………。

さっきっから大佐は何も言わない。

すっげぇ気まずい。この場から逃げたくなる………逃げるのは嫌いだけど。

 

「『全身黒男』の次は『嫌い』か………。君はつれないね。」

 

その声に優しさがあったから、ビックリして耳でっかく………成らないけど、顔を上げてしまった。

額に押し付けられたのは、大佐の白い手袋をはめた指先。力を入れれば『ドンッ』ってやつだ。

 

「今日の昼食は『エドのバーベキュー』。出来ればレアで………。」

 

頭に浮かんだ言葉を思わず呟いちまった俺を見て、大佐は咽の奥で『クックックッ………』って笑っていた。

右手を下ろし、代わりに手袋を外した左手を俺の額に当てた。

 

バチンッ!!

 

俺の額に痛みが走った。大佐の『デコピン』がヒットしたからだ。

額に手を当てながら痛みにしゃがみ込んじゃったよ!

 

「行くぞ。」

 

大佐はそう言ってすたすた歩いて行った。

立ち上がり周りを見ると、心配そうに俺を見ている女性に気付いた。 その人に笑顔を送る。端から見れば『上司と部下』には見えね〜だろうし、『心配要らないよ!』って意味の笑顔。

その人は、持っていた紙袋から何かを取り出し、俺に放り投げた。

 

……赤く色付いた『りんご』。

 

たぶん『頑張って!』の気持ちが入っているんだと勝手に解釈。

 

「サンキューなっ!」

 

その人にお礼を言って、先に行く大佐の所へ走り始めた。

 

俺、プチ・ハッピーな気分。

貰ったりんごを噛りながら大佐の横に並んだ。

 

……ガリッ、ムシャムシャムシャ。

 

チョッチ酸味がキツイけど、優しい味がするりんごを噛り続ける。半分ぐらい食べた頃、大佐が声を掛けて来た。

 

「そんなに食べたら昼食が入らなくなるだろう。」

 

そう言って俺のりんごを取り上げやがった。

 

「おい!俺のりんご返せ!!」

 

奪え返そうとしている俺を無視して、大佐は俺のりんごを食い始めた。

 

「あーーー!俺のりんご、勝手に食うな!!」

 

当の本人は、視線だけで俺の顔を見て食べ続ける。

 

俺は、フーと息を大きく吐いて………

 

「そんなに俺と『間接キス』したかったんか!」

 

って言ってからかってやったら、笑い始めた。

 

「………食うか、笑うか歩くか。どれかにしないと行儀悪いぞ。」

 

もう一言言ったら………また笑っている。

角を曲がると『視察』するレストランが見えて来た。

 

「大佐。ゴミにならないように『りんごの芯』食えよ。」

 

大佐は腹を抱えて笑い始めた。

なんか変な事言っただろうか?