報告書シリーズ 第1章

 

 

 

 

 

 

 

レストランから出てきた大佐に、手を上げて挨拶だけした。

 

『ご馳走様!!』

 

言わなくても意味判るだろうから声には出さなかったけど・・・。

 

・・・大佐からは返事がない。ヤローと飯食ったって甘い言葉は要らないからお互いそんなもんでしょう。

 

レストランを後にして真っ先にしなきゃならないのは、司令部に残して来たアルフォンスに連絡をつける事!!

・・・まだ『裸祭り』しているかもしれないが、取りあえず軍に電話をしてアルを捕まえれば良い。

 

またあの風景は見たくない・・・。

今晩魘される!

夢の内容は決まったようなものだ。

 

田舎と違って大きな都市に来ると『電話ボックス』なんて便利な物がある。

田舎の恐ろしい所に行くと、電話を探して2日歩き・・・なんてざらな話しだ。

 

何度地獄を見た事か!!

 

周りを見まわしながら歩くと・・・在りました!!反対側の歩道に『電話ボックス』。

車の往来を確認して電話ボックスに行き、ガラス戸で出来た扉を開いた。

ズボンのポケットからコインを出し電話機に投入する。

 

ダイヤルを回ししばらく待つ・・・

 

ツー・・・ツー・・・ツー・・・

 

無機質な音が終わると軍の交換手が出てくれる。

今日は女性だ。ラッキー!!

何時ものように『コード』と『名前』言って東方司令部の『司令室』に繋いでもらう。

 

「・・・・・・・・」

 

さっきから電話ボックスの扉が閉まらない。

扉を背にしているから気づくのが遅れたが、普通なら勝手に閉じるのに閉まった気配が無い。

でも、人の気配はしている。

 

--賊??

 

肩と頬で受話器をはさむ様にすると俺は両手を合わせ右手の『機械鎧』を鋭い刃物に練成させた。

狭い電話ボックスの、練成時に出す光が視界をいっぱいにした。

中で出来る事はあまり無い。

 

・・・いざとなったら電話ボックスを壊して外に出れば良い。

 

だけど、取りあえず『賊』の顔は拝んどかないといけない。

左手に受話器を持ち、練成した右手の刃先を振り向きざま相手に突き付ける・・・

 

「・・・た・・・大佐・・・」

 

さっき別れたはずの大佐がなぜここに??

大佐は、開けた扉に寄り掛かり腕組みをしながら俺を見ていた。

 

・・・口元は笑っているけど、目は・・・睨んでいませんか?

俺は、この状況についていけなくて。

 

・・・ここは何処?

 

私は誰?

 

ってくらい頭ん中真っ白状態になっている。

 

『もしもーし・・・おーい・・・』

 

呆然と大佐を見ていたら、大佐は電話機の方を指差している。

俺は、受話器から知らない声の男が叫んでいるのに気がついて慌てて電話機に向き直り電話口の男性に話し始めた。

 

……電話なんだからわざわざ向き直らなくても良いんじゃないか?

俺って小市民・・・・・・。

 

「あっつ。俺『エドワード・エルリック』だけど、そこに俺の弟居ない?・・・・そっ!『アルフォンス』電話口に出して欲しいんだけど。」

 

背後に立っている大佐に意識が行ってしまうのをなんとか堪えてアルに取り次いでもらう。

しかし、次に出たのはフュリー曹長だった。

 

「曹長?アルそこに居ないの?………えっ、ブレダ少尉と『ショウギ』……何それ?」

『東洋の『チェス』みたいな物……(ギャーーーーー!!)。アル君に教えたらすぐに上達してね・・・・・・・(ワアアアーーーー)

 

はっきり言って向こうの外野がウルサイ!!

曹長が何言っているか良く聞き取れない。

 

「・・・曹長、俺の声聞こえる?アルを電話口に出して欲しいんだ!」

『・・・(ヲオオオオーーー)から出られないん・・・・(スゲーーーー)

「もしもーし!!良く聞こえないよ。」

 

・・・段々頭痛くなってきた。勘弁してよ〜。

 

「・・・曹長?・・・・曹長!!おーい。誰か出ろよ〜。」

『・・・・・・おっつ、悪いな大将!!』

「ハボック少尉??」

『弟君、ブレダに捕まっていて出られ・・・・・(イケーーーーー)何か伝言・・・・(ウヲーーーー!!)何だ?』

「・・・・・・・」

 

会話が成立しない。

 

『・・・・(ウヲヲヲーーーー)・・・今晩さぁ、『大人の・・・』・・・・(イケエエエーー)・・・・付き合って・・・・徹夜(ザワザワ・・・)・・・寝られない・・・』

「何?今晩付き合えって?俺が?誰と?・・・って言うか『大人の』って俺に何やらす気?・・・寝れないって何で!!」

 

俺、相手の声が聴き辛いから思いっきりデカイ声で話しているんだけど・・・今、昼には『不適切』な言葉言わなかったか?

想像が妄想になって俺の顔はいっきに赤くなった。

 

「貸してみなさい。」

 

後ろで聞いていた大佐の手が俺の持っていた受話器を取り、滑り込む様に電話ボックスの中に体を入れると、ハボック少尉と話しを始めた。

 

「私だ。・・・・・ああ、良く聞こえていないみたいだぞ。」

 

普段も司令部の外野はウルサイのか?さらりと会話を成立させている大佐・・・。

年季の差でしょうか!?

それよりボックス内に2人はキツイんですが・・・。

大佐にくっ付いちまうよ〜・・・おい!大佐。

くっ付くなよ!!

 

「判った・・・聴いてみるから待って居ろ。」

 

そう言って大佐は俺を見る。

 

「今晩、弟の都合が良ければ『麻ジャン』に誘いたいらしい。・・・弟はルールを知っているのか?」

 

・・・麻ジャン。徹マンですか。

 

「アルの都合は本人に聴いてくれ!取りあえずアルは明日の9時までフリーだよ。・・・それとアルと徹マンするなら、今月の給料持って行かれるぞ!って言っといてくれ。強いぞ。」

「・・・そんなに強いのか?」

「ああ。多分『1人勝ち』だろうな。」

 

大佐は渋い顔をしながら電話口に居るハボック少尉と会話をし始めた。2・3度うなずく様に返答をすると勝手に電話を切ってしまった。

 

「あっ。おい大佐!!俺はアルに・・・・」

「今夜弟を借りるそうだ。場所は軍の休憩室だから何かあったら連絡して欲しいそうだ。」

「・・・・・・あっそっ。」

 

俺は疲れがどっと押し寄せ、電話ボックスの壁に体を預け天井を見上げた。

小さく息を吐いて電話ボックスから出ようと扉に手を伸ばした。

が、その手を大佐に捕まれた。

 

「・・・大佐。掴んでいるこの手の意味教えろよ。」

 

今日の大佐は何時もとかなり違う。はっきり言って『別人2号』。

ちなみに『パーマン2号』はサルだ。空も飛べる。

 

「鋼のの買い出しに付き合おうと思ってね。」

 

ふーん。付き合ってくれるの・・・・・・って!おい!!

 

「あのな〜。大佐仕事が残っているだろ、早く帰らないと中尉に撃たれるぞ!・・・じゃなくて何で大佐とショッピングしなきゃいけないんだ。女と行けよ!」

 

振り払おうとした手をしっかり握られて、電話ボックスから出られない俺は大佐を睨む。

 

「本来は、救援物資を輸送するのは軍の仕事だ。しかし、軍の手順を踏んで救援活動を始められるのは早くとも1週間。だから、きみと一緒に行動して私が伝票を預かる、そして経理課に書類を回す。それとも鋼のは、自分で報告書にまとめて私に提出しに来るか?」

 

大佐は、俺が言葉を挟む隙を与えない。

 

報告書・・・確信犯だよ。

断れないじゃん。

 

「大佐・・・仕事・・・」

「今日の午後は非番だ!」

「俺個人の買い出しも有るんだけど。」

「別にかまわないが」

「・・・・・・あっそ。」

 

結局断れないんだな。

 

俺様『ガックシ』・・・そう呟きながらもう一度大佐の掴んでいる手を外そうとした。が、逆に手を握り返され電話ボックスから引きずり出される様に外に出て、「何から買うんだ?」って女にウケル微笑を俺に向けた。

 

だ・か・ら、俺に微笑んでも仕方がねーだろ。

それとも俺をゲットしたいわけ?

 

・・・・・・まさか・・・な。

 

電話ボックスを出ると大佐は俺の手を繋いだまま歩き始めた。

 大佐は普通に歩いているけど、俺は『ピッチ走法』で後ろからついて行き、まるで駄々こねている子供みたいに感じるんですが。

 

「大佐、放せよ!ハズイだろ!!」

 

俺は立ち止まろうと必死に踏ん張ろうとするけど止まらない。

・・・情けない・・・やめられない・・・止まらない・・・そんな宣伝なかったか?

 とにかく、俺が何処に行くか解かっているのか?

・・・知らないはずだよ!絶対に!!

 

「ちっと待てよ。大佐は俺が何を買うか知っていんのか?」

 

大佐は急に立ち止まるから俺は大佐に激突した。・・・鼻低くなりそうだ。 大佐はぶつかった俺が反動でひっくり返らない様に手を背中に回している・・・。

 

 ・・・・・・・ハ・ナ・セ!!

 

「そう言えば聞いていなかったなぁ」

 「・・・・・・アホか?」

「何か言ったか?」

「・・・・・・別に〜」

 

出るものは溜め息・・・。

大佐と居るといろんな意味で疲れる。

普段大佐の下で働く東方指令部の皆さん・・・人間出来ていますね。

 ・・・俺には無理だな。

 

俺はコートの内ポケットから手帳を取り出し、中に挟んでおいたメモ用紙を抜き取った。

 イーストに移動する汽車の中で、書いた『買い出しリスト』 村長に『村の人口割合』を聞いて計算した1週間分の食料と『災害現状被害』から推測して書き出した資材。それと俺が見て必要と思う 『医薬品・水の浄化装置』ナドナド・・・。

品目とすれば結構な数量&質量!!これを運ぶとなれば『車』の手配も必要になる。

 車は、朝イーストに着いた時トラック3台を1週間運転手付きで『レンタル』した。

実はこれが結構な値段なのだ・・・。

折りたたんであるメモ用紙を開こうとしたら、大佐に「見せてみろ!」とか言われて取られた。

 

「・・・・・・これは鋼のが計算して出した数量か?」

「そうだよ!・・・何か変だったか?」

 

大佐はじ―っと俺が算出した買い出しリストを見ていた。が、いきなり俺の肩をポンポンと叩くと

 

「上出来だ!!」

「・・・当たり前だろ!!俺はいつでも手は抜かないの。」

 「・・・・・・ウィスタリア。」

 「・・・・・・」

 

やぶへび踏んじゃった。

 ちなみに俺がピアノで唯一弾けるのは『猫踏んじゃった』・・・途中まで。

 

「車の手配は終わったのか?」

「ああ。朝イチに終わらせた。同行にアルフォンスが付くよ、途中治安が悪いところあるからな。俺は、持てるだけの荷物を持って汽車で先に現地に着くよ。復興作業の手伝いをしないとヤバイんだ。」

 

大佐、何情けない顔しているんだ? ・・・・・・腹でも壊したか??

 

「大佐?腹痛いならトイレに行ってきたほうが良いぞ!」

 「誰が・腹が・痛いと言った!!」

 「じゃあ、どうしたんだ?」

 

大佐は腕を組みし、ばらく遠くを見ていたが、何か思い立ったのか俺の顔を見て

 

「トラックに、護衛車両を付けた方が良いな。念の為だが2台ほど手配しよう。」

 「そっか〜。トラック移動は思っている以上に危険か・・・。じゃあ俺がトラックについて行くか。アルが汽車だな。」

 

大佐は何も言わず仕事の顔で俺を見ていたが、優しい顔に戻って甘〜〜い笑顔で俺の頭を撫でた。

 

 ・・・俺はその笑顔の意味が解からねぇ。

 

「・・・・・・背が縮む!!」

大佐の笑顔に押されてお約束のセリフには何時もの強さか無い。 なんか自分の顔熱いんだけど。風邪??

 

「では・・・エド。何処から買い出しに行く?」

 

・・・・・・・・・・エッ・・・・・・・・エド??

 

俺は、マメ・・・鉄砲鳩食っちゃった?・・・様な顔をしていると思う。

 固まって動けない俺に、余裕の大佐は「何だ?」って顔で俺の顔を覗き込んでいる。

 

「・・・大佐?・・・・・・名前??」

「今日は、役職名で呼ばない事!と言ったはずだが?」

 「だって、視察は終わったし。」

 「いつレストランの店員に会うか解らないだろう?」

 「…会わないだろ?」

「会う可能性もある。」

 「会わないほうに『5,000点』。」

 「『5,000点』?」

 

呆けた大佐の顔は今日2度目だ。 大佐も結構人間らしい顔するんだ。

 いつも『余裕』ぶっこいた顔か、『皮肉』こいた顔しか見たこと無いから。

 

「・・・さてと。まずは『あれから』買いに行くか!!」

 「『あれ』??」

 

俺は、大佐の質問を無視して『あれ』を売る店を探した。

綺麗に整備された街中には、路上にワゴンで店を開いている人も居る。 例えば『クレープ』とか『花屋』とか・・・。

俺の目的は『髪ゴム』!髪の毛を縛るゴムが欲しい。

 普通に店を構えている『ファンシーショップ』とか『アクセサリーショップ』女の子ターゲットの『雑貨屋』には、男の俺 には入りにくい。 だから、ワゴンとかで買うと気が楽なんだ。

 

少し行った所にありました、ワゴンショップ。

シルバーアクセサリーとかと一緒に並んでいますよ『リボン』とか『飾りゴム』が。

俺は『飾りゴム』じゃ無いけどね。

 

俺は、ワゴンの前に止まり『安い・シンプル・丈夫』この3点を満たしている『髪ゴム』を選び始めた。

 

「・・・・・・」

 

黒いゴムで10本セット『680センズ』。良い値段じゃん。 俺好みで全然OKです。

ワゴンに吊り下がっている10本セットになったゴムを手に取ろうとした時、

 

「こんな細いゴムすぐに切れてしまうぞ。」

 「い・い・の!俺は『質より量&安さ&シンプル is ベスト』なの。」

 「しかし、『天下の国家錬金術師』が安物を身に着けていては品性が疑われるぞ!」

 

そう言って大佐はワゴン中央に吊るしてあった『1本470センズ』のゴムを手に取った。

 そのゴムは、確かに何の飾りも付いてない光沢のある濃紺のシンプルなゴムだ。

太さ的にもバッチリいけているが、ゴムに巻いてあるこの布って・・・何?なんでこんなにお高いの?

 

「買えるわけねーじゃん。予備も含めて10本近く欲しいんだよ!これ10本も買ったら『4,700センズ』だよ。俺の1週間分の食料と同じだよ!」

 

大佐は、俺の髪の毛を手に取ってまじまじと見ている。

いきなり俺の三つ網を結んでいた紐をほどいて、改めて手に取って見始めた。

 

「おい!何するんだよ。髪の毛バラバラになるだろ!!返せよ。」

 「・・・・・・これは何の紐だ?」

 

大佐は渋い顔で俺と紐を交互に見ている。

俺は三つ網が解けてしまった髪の毛を隠す様に両手で後ろの毛を握って抗議した。が、大佐の質問に少しブルーになった。

 

「・・・・・・『マモちゃん』・・・・・・」

 

この紐は、先日居た村で『髪ゴム』が切れて予備も無くなった時、近くの納屋にあった紐だ。

 

 『マ○を収穫した時、マ○を入れて出荷する時に袋の口を縛るヒモ』、略して『マモちゃん』である。

俺的には『マ○用のヒモ』で髪の毛をまとめるなんて屈辱!!

 

「『マモちゃん』??・・・農業用の麻の紐に見えるが違うのか?」

「『マモちゃん』はただの麻の紐とは違うんだよ。俺の中ではかなりヘビーな紐なんだよ。」

 

意味わかんないだろう〜。俺も自分で言っていてわかんね―もん。 大佐は『マモちゃん』を凝視している。だけど、吊るしてあった『1本470センズ』のゴム総てを取ると、店主に渡して会計をし始めた。

 

「大佐!何本有ったんだよ?って言うか、俺そんな高いの買えないし・・・!」

「ロイだ!」

 

俺の言っている事と、返ってきた答えがかみ合って無いんですけど。 って、さっさと会計するなよ!

えっ・・・全部で8,460センズ!?・・・・・・高すぎ。

 

「・・・・・・」

 

俺が言葉も思考も気力も失っている間に、大佐は胸元から財布を取り出し会計を済ませてしまった。

 

「大佐!金はら」

 「ロイだ!」

 「・・・ロイ。金払うよ。」

 

俺は自分の財布を出そうとズボンのポケットに手を入れようとしたら、その手を捕まれ買ったゴムが入った袋を手のひらに乗せられた。

 

「プレゼント」

 「・・・・・・??プレゼント?今日俺の誕生日じゃないぜ?」

「プレゼントには『理由』がいるのか?」

 

・・・出たな『別人2号』!サルなら「ウッキ―」って鳴いてみろ!!

 その笑顔は何なんだ?腕組みして俺を見つめて何になる?

 それとも・・・このゴムの『等価交換』で、俺に何をさせる気だな!『視察』か?・・・それとも・・・。

 

「これ貰ったらどんな『借り』を返せば良いわけ?」

 「素直に受け取りたまえ。プレゼントはプレゼントだよ。」

 「なんか・・・ブッキーなんですけど。」

 

すげ―ブッキーなんです。 そんな俺の気持ちを知らんプリプリで、またも次に買うものも聞かず俺の手を引いて歩く大佐・・・。

 

ホントにブッキ―!必ずブッキ―!!・・・・・・歌えちゃうよ?

 

「たい・・・ロイ。取りあえず髪の毛縛りたいんだけど!」

「エド。普段髪の毛は降ろさないのか?」

 

大佐は俺の髪の毛を見て、またも意味不明な質問をしてくる。降ろそうが縛ろうが俺の勝手じゃん!!

 

「寝る時と風呂入っている時以外は縛っている。」

 

それが何か悪い?と目線で大佐に意見してみた。

 

「あんまり髪の毛を一定方向に引っ張っていると『はげて』来るらしいぞ!」

 「ぴっかり君!?」

 

俺は自分の顔に『アームストロング少佐』の頭を付けてみた・・・・・・。

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

ピンポンパンポーン・・・・・・

 

現在思考回路がショートしています。

 

復興までにしばらくお待ち下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・今日ぐらい縛るの止めるわ。」

 

大佐は目を細めながら俺の髪の毛をいじり「そのほうが良いと思うぞ」 って言っていた気がする。

今の俺の頭の中は、自分の顔に『アームストロング少佐』の頭とヒゲが付いている状態が占領している。 早く『殲滅部隊』が来て欲しい所だ。

 

歩き続ける大佐に、 「次は〜『非常食買い出し〜。非常食買い出し!お出口右側になります。』」と次の目的地を教える為に、なぜか『汽車の車掌口調』の俺。 大佐は楽しそうに笑いながら軍でひいきにしているらしい店を案内してくれた。

『軽量』で『物持ちが良い』と色々選んでくれる大佐・・・。

楽しそうですね〜。 ・・・そんなに『乾パン』見て楽しいんですか?

 解かりません大人って・・・。

 

「次は何を買うんだ?」

 

非常食をゲットして・・・次は

 

「支給物資だよ。」

大佐はポケットから俺の書いたメモ用紙を出すと、強引に俺の手を引き次々と店を廻り必要な物を買って行く。 少し離れた所から見学中の俺。

 

・・・俺『洋なし』?『用無し』!!

 

「たい・・・ロイ。車の積み込み朝の9時にしたいんだ。一緒に段取りしといてよ。」

 

大佐は俺を一見すると

 

「先ほど『司令部』に電話をした時、弟は9時までフリーと言っていたからな。店主には伝えてある。」

 

・・・・・・お見それいりやの・・・ですね。失礼しました。

 

 

 

ある程度店を廻った頃、俺が書いた必要物資の手配は総て終わっていた。

 

「悪かったな・・・せっかくの非番だったのに。」

 

俺はこれでも『最大級』のお礼を言った。

 

「エドはこれからどうするんだ?」

 

大佐は俺の目を見て微笑みながら静かに答えを待つ。

止めてくれその笑顔!! 頭ん中グチャグチャになってくる。

 

「帰って・・・飯食って・・・風呂入って・・・寝るだけ。」

 

鋼の指を折り、今後の予定を口にする。

 

「では、今度は私の用に付き合ってもらおう。」

 

そう言うと、またも俺の手を引っ張り何処かに行こうとする。

 

俺の変事ぐらい聞けよ!!

いったい『大佐の私用』って何なんだ?

 

 

時間は夜の6時をまわっていた。