報告書シリーズ 第1章

 

 

 

 

 

俺の手を引いて歩く男『ウッキー大佐』…もとい、『別人2号変大佐』事ロイ・マスタングは、さっきの買い出しで頭が逝かれたのか「私はとってもご機嫌だ!!」みたいな顔をして歩いている。

 とても、俺より14歳年上に見えない…いや、年上だろう!!

…こいつの性格で俺と同い年くらいならゼッテー友達なんて出来ないな!マジホント!!

 

 

「で!俺を何処までさらって行く気?…で!!この左手はイツ離してくれるんだ?」

「手を繋ぐのは嫌いか?なら…」

 

そう言って俺の左腕を大佐の右腕に絡ませた…腕組んで『ラブラブー』……!?

 

「そーじゃねーだろ!!野郎と腕組んで何が楽しいんだよ!」

「では、『肩』でも組もうか?」

「……俺に喧嘩売ってる?」

 

俺と大佐の身長さじゃ届かないじゃん。

 

「…大…ロイ!俺の身長じゃ『秘密君1号』エーンド『秘密君2号』装着しないと肩組めないんだよ!!砂粒程度の小ささで悪かったな!!」

「…誰も言ってないだろう。それより『秘密君1号』・『秘密君2号』とは何なんだ?」

 

始まりました。エリート大佐には解からないパンピーな言葉!

一部のヤツらは知っている!!

『超秘密兵器』だ。

 

「知りたいか?『秘密君1号』は厚底20cmくらいの靴だな。履いているズボンと同じ色で出来ていて、残り10cmくらいに靴の絵が描いてある…これ履くとみょーに足が長いんだ。」

「ブッ…クックックッ……それで…『2号』は?」

 

大佐、肩が揺れていますよ。それより俺の腕外せよ…。

 

「『秘密君2号』はなぁ…。やけに縦長の帽子なんだ!大体30cmくらい…これをかぶると額がスッゲー長くなる!帽子の先はカツラでも帽子でもOKっー優れもの!!」

「はっ…?」

 

大佐…固まりました。

多分『妄想爆走中』だろう。だけど俺で妄想するのは止めて!!

 

「わははははは…」

 

本日2回目の『たったっ大佐の大爆笑!!』(親切にメロディー付き )が始まりました。

結構普通に笑うんだよなぁ。

しかし、涙流すまで笑うなよ!こっちが恥ずかしくなってくるだろう。

 

「笑っているんじゃ無くて…なんで『仲良しバカップル状態』で歩かなきゃ行けない訳?」

「それは…楽しいから……エドと居て楽しいから。」

 

笑うか喋るかどっちかにしな。

 

 

 

ってー ……今、大佐すげー事口ばしらなかった?

 

 

『俺と居て楽しい』!?

 

 

 

笑いながら俺を『エスコート』して歩く笑い上戸大佐は、俺の目を覗きこむ様に顔を傾けてきた。

俺にとって今日の大佐こそ『不思議青年ロイ』ってタイトル本出そうに別人なんです。

訳わかんないです…。

 

「頼むからその目で俺を見るな!そーゆーのは『彼女』に使え!!使用上の注意をよく読め!」

「『使用上の注意』か…かなり危険な事は確かだな。」

「おう。劇薬だぜ!!」

 

顎に手を当てながら笑う大佐。

アルと居る時みたいに話すのがアウトなのか…?

で、『仲良しバカップル状態』は続いているわけだ…。

 

 

 

 

 

しばらく歩くと『ゴージャス』な家が立ち並ぶ住宅街にやって来た。

どこの家もデッカイ家で「お宅のご一家何人家族?兄弟11人くらい居る?」なんて聞きたくなるぐらいの部屋数…。

昔、タッカーの家を見てマジ驚いたけど、ここら辺もそれ並にデカイ!!

 

「ロイ、こんなところに来て何があるんだ?やっぱ高級住宅街に忍び込んで宝石でも『パクル』つもり?」

「『パクル』…?盗むと言う意味か!?なぜ私が窃盗などしなければいけない?」

「じゃあ、何でコンな所に来たんだ?」

 

大佐の腕にブル下がる様な体制の俺に、渋い顔をした大佐はイキナリ止まってある1件のデッケー家を指さした。

 

「私の家だ。」

「デケー……。大佐両親と同居?」

「私1人で住んでいる。」

「もったいねー

「スッゲー」とか「デッケー」しか言葉が出ない。

お手伝いさんいっぱい居そうな『邸宅』。

 

…まじっすか??て感じの大佐の家!

 

「『大佐』でも有り『国家錬金術師』でもあるんだ。こんなもんだろう?」

「こんなもんねぇ〜…」

 

税金で『こんなもん』て言われりゃー皆切れるわな。

大佐は、そんな事を考えている俺を『マスタング邸』に引きずり込む。

身の危険を感じるのは俺だけか!?

 

 

 

 

 

玄関を入ってホールを抜けると決して華美ではないが『お高い家具』が並ぶリビングに案内された。

 

「今は6時半過ぎだが、私が行きたい場所にはまだ早い時間でね。ここで夕食を取ってから出かけよう。」

「夕食?大佐が造ってくれるの?」

「ロイだ!取りあえず簡単な物しか造れないがな!!」

 

へー。大佐って料理できるんだ?

俺は少し見直した。軍であれだけ忙しければ『自炊』するの結構大変じゃん…。

もっぱら『外食派』だと思っていた。

 

「で、今晩の夕食は何?」

「……何が食べたい?」

「何が造れるんだ?」

 

大佐に促されたソファーに座ってくつろぎながら、横に立つ大佐の顔を見ると、少し困った顔をしている。

情けない顔と言った方が正解か?

 

「大…ロイの『造れる料理』言って見ろ。」

「スクランブルエッグ…チーズを切る…ソーセージをボイルする…パスタを…」

 

おい待て、それって『料理』っていわねーだろ!

 

「よくそれで生きているなぁ〜。と言っても軍内で食事か、姉ちゃんたちと外食か…造ってもらうか…。」

 

期待&見直した俺が馬鹿だった。

俺は小さく溜め息をついて席を立ち、キッチンを探しながら歩き始めた。

大体家の構造は基本的にどこも一緒だから直ぐ見つかったけど…このキッチンがデカイ事。

子供部屋1つくらい出来そうなほど広い。

しかも、あまり使った形跡がない。

後ろから付いて来た大佐に、「勝手に造るぞ!!ロイは酒飲むのか?それともガッチリ食べんのか?」って質問をしたら、驚いた顔で俺を見ている。

 

「エドは『料理』が出来るのか?」

「人並み程度。旅先で外食出来れば運が良い方だ、サバイバルなんてしょっちゅうだし、民家に泊めてもらった時は飯の仕度ぐらい手伝わねーと…それに、母さんが死んでから適当に料理していたし。」

「『ロックベル』宅で食べていたのでは?」

「3度の食事全部って訳いかねーよ。夕食はお願いしていたけどな…朝と学校に持ってく弁当2人分はきっちり料理していたぞ。」

 

なんか暗い話しをしながら勝手に冷蔵庫を覗かしてもらった。

造らない割には色んな食材有るんですが。

 

「…この食材自分で用意したのか?」

 

料理らしい物造らない大佐にしては冷蔵庫に『魚』『肉』『野菜』。珍しい食材も見える。

姉ちゃんでも置いて行ったんなら勝手に使うのはヤベーだろ。

 

「昨日の夕方、視察で『市場』に行った時にな、結構な量を貰って軍の人間に分けたのだが、これだけ貰いてが無かったんだ。」

「…貰い手って犬猫じゃねーんだから。」

 

俺は、色々な意味で溜め息しか出ない。

 

「遠慮なしに勝手に使わせてもらうぞ!腐るより良いだろ。」

 

そう言ってオーブンに火を入れ、冷蔵庫から勝手に『魚』を出し流水と包丁のミネで鱗とハラワタを取り、オーブントレーに『魚』を乗せ岩塩とハーブを散らしオーブンに突っ込む。

手っ取り早いがこれが1番美味い。

添え物野菜は後でオーブンの魚の横に転がして焼けばOKだ!

 

1品目、上等。

 

「手早いな…」

 

感心しているのか案山子なのか…突っ立っている大佐に冷たい目線で話しかける。

 

「何か造れそうなもの造れよ!『サラダ』ぐらいなら造れるだろ?」

 

そう言って『レタス』を渡し、俺は『トマト』『キュウリ』『玉ねぎ』をスライスし始めた。

で、大佐はレタスを持って馬鹿っ面で突っ立っている。

 

「ロイー、突っ立ってねーでレタス洗って切れよ!」

「…包丁が空くのを待っているのだが。」

「はー………?????」

「あのな〜…レタスやきのこ類は包丁使うと味が落ちるの!常識!!手で切れ。」

「そうなのか?」

「そうなの!!1人暮し長いんだろう?本当に料理してこなかったんだなぁ。」

 

眉間に皺を寄せて話すのは大佐の十八番だろ?俺が寄ってるよ。

当の大佐は『料理無能』でレタスをマジマジ眺めている。

 

「た…ロイ。俺サラダやるから…」

 

そう言いながら俺は、近くにあった止まり木の様な椅子を引っ張ってカウンターの様な作業台の近くに置いた。

 

「ここに座って仕事してくれ。」

「……仕事??」

 

俺は馬鹿っ面の大佐を座らせて、冷蔵庫から小さいビール瓶とチーズ、スライスしたトマト・キュウリ・オニオンを皿に乗せ大佐の横に置いた。

 

「そっ。『味見部隊』よろしく!!」

 

そう言ってサラダにかけるドレッシングを作り始めた。

30近い大人って……手がかかる。

 

 

 

適当な蓋付きの瓶を探し『オリーブオイル』『バルサミコ酢』『塩』『コショウ』『ハーブ』を突っ込んで振る。

片手で振りながらもう片方の手で鍋に水を入れ沸かす。

 

「本当に手馴れているなぁ。…いつでも嫁に行けるぞ。」

「誰が嫁に行くか!!」

 

くっだらねー事言っている大佐の皿に出来あがったドレッシングをかける。

幸せそうに俺を見ている大佐。そんなに腹減っているのか?

可哀相に。

 

 

 

そんなこんなで…『サラダ』『ガーリックパスタ』『魚の香草焼き』『フルーツボール』を造り取りあえず完成。

使った鍋を洗ってカウンターテーブルに出した。

 

「よーし!!食うぞ。」

 

って気合入れて大佐に声をかけようとしたら、椅子に座ってねーじゃん。

どこ行ったんだ?

 

「…ロイ……なーんで俺が後ろから抱きしめられなきゃいけね−んだ?」

「こうして居ると『新婚さん気分』だろ?」

 

…結婚するのは男と女。

俺達男同士!

第一俺が『女』役って−のが気に入らない。

俺からは大佐がどんな顔をしているかわからねーから『おフザケ度』がイマイチ掴めない。

 

…こっちが不利だ。

 

「そんなに寂しいなら『結婚』すれば良いだろう?」

「…私の『本命』は、私の気持ちに気づいてはいないんだよ。…現在『片思い』と言う所か。」

「『片思い』??」

 

女っタラシの大佐が『片思い』ねー。

世の中の七不思議に入りそーな話しだ。

 

「モテモテの大佐殿にしては『奥手』な事言っているじゃん。アタックGO!GO!って行きそうだけどなぁ。」

「…相手の気持ちが掴みきれないんだよ。確信が持てなくてね。」

 

大佐の声からして結構ヘビーな状態みたいだなぁ。

こいつなら心配いらねーだろうけど。

 

「確信ね−。どんなヤツだそいつ?」

「可愛いよ。しかし、真っ直ぐ私を見てくれると思えば目を逸らす。近寄れば逃げて行く…気が付けば側に居る。不思議な子だよ…」

「……ご愁傷様。」

 

哀れだね−…本命が手に入らないとここまで『ヘタレ』な声で言うかね−。

 

「そいつ…ロイは皆に好かれているから、自分の居場所が無いって思っているんだろ?あんたなら大丈夫だよ!!…きっと。」

 

ってなーに力込めて抱きついているかなぁ。

そいつと間違えるなよ!!

 

「……飯が冷める。……腹減った!!」

「そうだな。せっかく造ってもらったんだ頂こう。」

 

やっと手を放しやがった。

後ろ向いちまったから顔見れねーけど、元気出せよ。

 

「よし!!気合入れて食べるぞ−!!」

 

俺達はやっと夕食に有りついた。

 

 

 

で、大佐の行きたい所って何処よ??